ランニング・ワイルド / 嵐の中へ (1989)
1976年にドイツで結成されたヘヴィメタルバンド。
1989年に発表された5枚目のアルバム[Death or Glory]の1曲目に収録されています。
海賊をモチーフとしたコスチュームやステージセットが多くのファンに愛されているベテランバンドです。
高校の学内バンドとして結成された[Granite Hearts]が1979年に現在のバンド名へと改名。
1983年には地元のNoise Recordsと契約をしてコンスタントにアルバムのリリースを重ねると共に精力的なツアーを行います。
1987年にリリースした[Under Jolly Roger]からは、これまでの悪魔的なイメージから脱却をして海賊のコスチュームに身を包むようになりました。
前作[Port Royal]を発表後にStefan Schwarzmann(Dr)が[U.D.O.]に引き抜かてIain Finlay(Dr)と交代するメンバーチェンジがありましたが、後にトレードマークともなる音楽性を完全に確立した本作をリリースします。
バンドの代表作であり過去最高の売り上げを記録した本作から、アルバムのオープニングを飾る勇猛なスピードナンバーがこちらです。
ケルト民謡のメロディを勇猛なリズムに乗せて熱く演奏するパフォーマンスが多くのフォロワーを生み出した、バンドの代名詞とも言える1曲です。
ちょうど同時期に同郷の[Helloween]がパワフルなスピードメタルに明るく前向きなメロディラインを乗せて人気を博しましたが、こちらは同じアプローチながらも汗臭さを全面に押し出したスタイルです。
1分45秒にも及ぶ長いイントロで引っ張るだけ引っ張り、暫しのブレイクを挟んで一気にテンポアップする展開は完全にライブでのパフォーマンスを意識した胸が高鳴る名演です。
印象的な音階のギターリフにRock’n’Rolf(Vo/Gt)のがなり立てるヴォーカルが乗り、サビでキャッチーなメロディを分厚いコーラスワークで全力で歌い上げるスタイルは、まさに曲のタイトル通り荒れ狂う大海原に挑戦する海賊船のイメージそのものです。
荒々しいサウンドプロダクションと前のめりで攻撃的なリズムがメロディラインの勇猛さを絶妙なバランスで盛り上げています。
良い意味での汚れた雰囲気が、楽曲の持つドラマチックな要素を更に増幅する役割を担っているのも興味深いところ。
押し寄せてくる音の密度に、ただただ圧倒されるばかりです。
90年代後半からヨーロッパを中心にメロディックパワーメタルの人気が爆発しましたが、[Hammerfall]の[The Dragon Lies Bleeding]に代表される”Running Wild系”と呼ばれる勇猛なメロディを全面に押し出した楽曲が多く生み出されました。
まさに、そのパイオニアともなった歴史的名曲です。
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