ディセクション / レトリビューション・ストーム・オブ・ザ・ライツ・ベイン(1995)
1989年にスウェーデンで結成されたブラックメタルバンド。
1995年に発表された2枚目のアルバム[Storm Of The Light’s Bane]の5曲目に収録されています。
ブラックメタル初期のバンドの中でも特にメロディを強調し、メロディックブラックメタルの先駆者となったバンドです。
数枚のデモ音源を発表後に1993年に地元スウェーデンのNo Fashion Recordsと契約。
発売されたデビューアルバム[The Somberlain]は同年に殺害された[Mayhem]のEuronymousに捧げた作品として話題となり、美しいツインリードのハーモニーを多用したアレンジは多くのファンを得ました。
翌年にはドイツの大手インディーズレーベルのNuclear Blastへと移籍。
John Zwetsloot(Gt)が脱退し、後任にはJohan Norman(Gt)が加入してセカンドアルハムのレコーディングを開始します。
前作にも増してメロディックになった本作はエクストリームメタルシーンに大きな衝撃を与え、メロディックブラックメタルのマスターピースとなりました。
その中から、ブルータルなリフワークが光るタイトルトラックがこちらです。
プリミティブなブラックメタルの王道を行くブルータルなリフを聴いていると、一人きりで吹き荒れる吹雪の中に取り残されている情景が浮かんできそうです。
ヒステリックな音色でかき鳴らされる不協和音は、否応にも心の奥底にドロドロした不安の種を植え付けて来ます。
ですが、その中でも強烈に主張をするギターのメロディがこのバンド最大の個性として光ります。
メロディラインをはっきり奏でる単音のギターリフ、そしてIron Maidenのようにツインリードが織りなすハーモニーは、同時期に活動していたブラックメタルバンドとは明らかに一線を画しています。
ここまでメロディを強調できたのには、バンドの活動拠点がスウェーデンであったことも影響しています。
ブラックメタルの生まれたノルウェーのシーンでは、Inner Circleという悪魔崇拝の思想を持った若者達の集まりがありました。
[Mayhem]のEuronymousを中心とするその団体は、ブラックメタルバンドとして活動をしながら教会に放火をしたり異端と決めた人物を攻撃したりと犯罪行為に手を染めていきます。
メロディックなサウンドも商業的成功に色目を使う行為として断罪の対象となりました。
スウェーデンで活動していた彼らは攻撃の対象から逃れることができ、自分たちの理想とする自由な創作に没頭できたわけです。
高速なブラストビートを主体とする過激なサウンドながらも、ここまで抒情的なメロディラインを取り入れたのは実に革新的です。
また、当時のブラックメタルの基準で見ると驚くほどクリアな音質も多くのリスナーを驚かせたことでしょう。
後に[In Flames]や[Children of Bodom]等のメロディックデスメタルバンドも彼らから影響を受けたと公言していることからも、多くのフォロワーを産んだ先駆者であることが伺えます。
ブラックメタルの枠を飛び越え、メロディックデスメタルへの架け橋になったことは言うまでもありません。
スカンジナヴィア半島におけるヘヴィメタルの歴史を語る上で、避けて通ることは出来ない名曲です。
コメント