【曲紹介】Alcatrazz / Jet To Jet

アルカトラス / ジェット・トゥ・ジェット (1983)

1983年にロサンゼルスで結成されたヘヴィメタルバンド。
同年に発表されたデビューアルバム[No Parole from Rock ‘n’ Roll]の3曲目に収録されています。

HR/HMシーンを代表する錚々たるメンバーが在籍していたスーパーバンドとして知られています。
[Rainbow]や[MSG]で活動していたGraham Bonnet(Vo)、元[Steeler]の[Yngwie Malmsteen](Gt)、元[New England]のGary Shea(Ba)とJimmy Waldo(Key)、[Alice Cooper]のバックを務めていたJan Uvena(Dr)が集まってRocshire Recordsと契約。
リリースされたデビューアルバムは[Rainbow]からの影響が強い様式美サウンドと、[Yngwie Malmsteen](Gt)の圧巻の速弾きが話題となりました。
その中から、ファンの間で特に人気の高いスピードナンバーがこちらです。

イントロのギターリフを聴いた多くのリスナーは、おそらく面食らったのではないでしょうか。
[Rainbow]が1981年にリリースした名曲[Spotlight Kid]とあまりにも似ているからです。
Ritchie Blackmoreに心酔する[Yngwie Malmsteen]のことですから、憧れの度が過ぎてしまったのでしょう。
間違いなく本人も途中で気がついたと思いますが、自身のルーツをアピールする目的でそのままにしていた可能性が高いです。

インパクトの強いギターリフに負けじとGraham Bonnetも頑張っています。
この曲のメロディラインは極めて広い音域で作られており、特に高音部は無謀とも言えるハイトーンを要求されます。
それを血管がはち切れんばかりのパワーで歌いこなすGrahamは大したものです。
彼の声は高音になっても声量が一切落ちず、むしろよりいっそうパワーが増すのが驚くべきところ。
ポップス界隈出身のシンガーですが、ハードロックやヘヴィメタルを歌うために生まれてきたような男です。

さて、この曲にはもう一つ大胆にフレーズの引用をしている場所があります。
それはギターソロ!
常識はずれの高速フレーズでありながら、クリアなトーンでたった一度のミスタッチも泣く弾きまくる流麗なプレイに多くのリスナーは聞き惚れることでしょう。
エモーショナルなロングトーンと瞬間的な超高速プレイを織り交ぜながら緩急あるプレイ。
大胆な引用は、この名演の中に隠されています。

ソロの後半部分をよく聴くと、[Scorpions]の[Virgin Killer]のソロと同じフレーズが聴こえませんか?
速度が2倍ぐらい速くなっており、前後のフレーズと違和感が全くないように組み込まれているので油断していると聴き逃します。
Uli John RothをRitchie Blackmoreと並んで敬愛しており、日夜コピーに明け暮れていたYngwieらしいプレイです。

スウェーデンから海を越えてやってきた若干20歳のギタリストは、怖いもの知らずでした。
先人たちへの尊敬の表明は、フレーズを自分の曲で引用することなのだと本気で思い込んでいたのかもしれません。
ですが、劣化コピーになるどころか歴史に残る名曲に仕上げることが出来たのは、高度なテクニックで原曲の持ち味をより活かせたからです。

この曲が無ければ後の速弾きブームは巻き起こらず、ネオクラシカルメタルというジャンルも存在しなかったかもしれません。
一つのジャンルを決定づけるパイオニアとなった歴史的名曲です。

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