【曲紹介】Venom / Witching Hour

ヴェノム / 魅せられた時 (1981)

1978年にイングランドで結成されたヘヴィメタルバンド。
1981年に発表されたデビューアルバム[Welcome To Hell]の7曲目に収録されています。

エクストリームメタルの始祖と呼ばれ、過激なスタイルの基礎を作り上げた伝説のバンドです。
イングランド北部の都市ニューカッスルの若者達で結成され、幾度ものメンバーチェンジの末にスリーピースのラインナップが固まります。
それまで録音したデモ音源がインディーズレーベルのNeat Recordsの目に留まり、契約を獲得。
レーベルはバンドにこれまでのデモ音源をもう一度レコーディングして提出するように指示します。
限られた時間で突貫工事でのレコーディングだったので演奏も音質も商品として成り立つレベルではありませんでしたが、なんとレーベルの独断で殆ど手を加えずにデビューアルバムとしてリリースされてしまいました。
良くも悪くも衝撃的な内容となった作品から、ヘヴィメタルが更に過激な別ジャンルへと発展を遂げるきっかけとなったナンバーがこちらです。

[Motorhead]が[Overkill]や[Ace Of Spads]で打ち出した高速ビートのロックンロールサウンドにザクザクと刻まれる切れ味の鋭いギターリフを乗せるアイデアは、当時としてはこの上なく過激なスタイルでした。
このギターリフがとにかく強烈!
まるで野菜を包丁で切り刻んでいるかのようなスピード感は、激しい音楽を求めているキッズ達の心を鷲掴みにしました。
このサウンドに影響を受けた幾多のバンド達がが更に過激な表現を追い求めた結果がスラッシュメタルの誕生へと繋がります。

また、アーミングを多用したギターソロもこの曲が最初です。
後に[Slayer]がほとんどの楽曲で使用している黄金フレーズは、この曲を模倣としていることからも歴史的価値があります。
1981年はまだヘヴィメタルの歴史が始まったばかりの時期。
そんな時代にこれほど斬新なプレイを思いつくセンスは、天才という他ありません。

ですが、この曲を最も印象づけているのが劣悪な録音環境。
隣の部屋で安物のラジカセを使って鳴らしているかのような臨場感皆無のギター。
過剰に歪ませた結果、ただの雑音に成り下がっているベース。
段ボールをボコボコ叩いているような、力強さのかけらも無いドラム。
マイクのセッティングや音作りを殆どせずに録音したのでしょうか。

演奏も稚拙そのもの。
レーベルから求められた納期がよっぽど迫っていたことが伺えます。
徹夜でのレコーディングで寝不足によってフラフラになりながら、ワンテイクしかチャンスの無い状態でプレイしたのでしょうか?
元々演奏力が低いバンドですが、それにしても酷い代物です。

ここまで書くとマイナスに思えるかもしれませんが、アンダーグラウンドでサタニックな雰囲気が驚くほど演出されており、バンドのコンセプトと出来上がった作品が見事にマッチした奇跡です。
後に巻き起こるブラックメタルのムーブメントではVenomにならって劣悪な音質でレコーディングするバンドが多く現れたことからも、この結果の必然性が伺えます。

ヘヴィメタルは、その過激な部分を強調したサブジャンルをいくつも生み出しました。それらをプレイするアーティスト達に自分達のプレイしているジャンルを生み出した始祖は誰かと尋ねれば、きっとこう返事が来るでしょう。
「Venomである!!」と

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