【曲紹介】The White Stripes / Icky Thump

ザ・ホワイト・ストライプス / イッキー・サンプ (2007)

1997年にアメリカのデトロイトで結成されたロックデュオ。
2007年に発表された6枚目のアルバム[Icky Thump]の1曲目に収録されています。

ギターとドラムのみで構成されたシンプルなガレージロックサウンドが人気を博したバンドです。
Jack White(Vo,Gt)とMeg White(Dr)の夫婦が姉弟という設定で活動を始めるや否や、イギリスで大きな話題となります。
離婚後も2人は音楽的パートナーとして非常に良好な関係を続け、2003年に発表した[Elephant]は全英アルバムチャートで1位を獲得するなど商業的な成功も果たしました。
精力的なツアーを重ねるうちに勢いが本国アメリカにも伝わり、前作の[Get Behind Me Satan]はBillboardチャートでも3位に入るヒットとなります。
その間に2人はデトロイトを離れてナッシュビルとロサンゼルスにそれぞれ移住したり、Jack Whiteは[The Raconteurs]を結成したりと新しい環境に身を置きます。
新鮮な気持ちで持てる全てを出し切るかの如くレコーディングされた本作は、大手のWarner RecordsからリリースされてBillboardチャートで過去最高の2位を獲得する結果となりました。
グループのラストアルバムともなった最高傑作と名高い作品から、先行シングルにもなったタイトルトラックがこちらです。

ファズを思いっきりかけたサイケデリックなギターサウンドと非常にシンプルなドラムプレイが混ざり合い、アバンギャルドな世界観が演出されています。
ベースが存在しない為に低音部に大きな音の隙間があり、バスドラムの低音がそのスペースに見事に入り込んでよく響きます。
一定のリズムを刻むという概念は無く、初期衝動に溢れた破壊的なプレイはガレージロックの魅力を濃縮したかのよう。

サイケデリックなJack Whiteの歌声は何作もリリースを行った円熟味とは全く無縁の狂気を感じさせますし、唐突な曲展開と破天荒なギターからはプレイを心から楽しんでいる姿が浮かんできます。
その展開に合わせて自由自在に対応するMeg Whiteのドラミングは、リズム楽器の概念を超越したリード楽器としての役割を果たしています。

コンピューターを一切使用せずにヴィンテージ楽器とアナログMTRを駆使してレコーディングされたサウンドは、音の薄さが逆に武器になっています。
薄汚れたカビ臭い音はモコモコした倍音を多分に含んでおり、楽曲に言葉では言い表せないエネルギーを与えています。
これ以上の作品を作るのは不可能と判断してグループが解散の道を選んだのも頷ける内容です。

商業的なヒットを狙ったスタイルを真っ向から否定し、実験と初期衝動だけで臨んだ結果が商業的なヒットだったというのもユニークな結末です。
ガレージロックの歴史に混然と輝く名曲と言えるでしょう。

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