【曲紹介】Sodom / Outbreak of Evil

ソドム / アウトブレイク・オブ・イーヴル (1984)

1981年にドイツで結成されたスラッシュメタルバンド。
1985年に発表された最初のEP[In the Sign of Evil]の1曲目に収録されています。

ジャーマンスラッシュメタルの代表格であり、[Destruction]、[Kreator]と共にシーンの創世記から活動を続けているバンドです。
地元の炭鉱夫として働いていたTom Angel Ripper(Vo/Ba)は、退屈な生活から脱出するためにバンドを結成。
幾度かのメンバーチェンジの後に、敬愛する[Venom]や[Motorhead]に倣って3ピースのライナップが揃います。
そのメンバーでリリースをした2枚のデモ音源がマニアの間で話題となり、地元のインディーズレーベルであるDevil’s Gameと契約を交わすことに成功。
レーベルがスタジオ代の支払いを拒否した為に曲数を削ってフルアルバムではなくEPの制作となったものの、初めての本格的なレコーディングに臨みます。
完成した作品は悪魔崇拝を主題とした背徳的な歌詞に満ち溢れており、ブラックメタルと呼ばれてアンダーグラウンドで大きな話題となりました。
その中から、アルバムのトップを飾るライブでもお馴染みの人気曲がこちらです。

一言で表すと、整合感など欠片も無いカオスなアンサンブルです。
音楽ジャーナリストで[Sigh]のリーダーである川嶋未来氏も”お互いの音が聞こえない状態で適当に演奏しているとしか思えないようなバラバラぶり、なのに最終的にはきちんとつじつまが合っていたりという奇跡の名盤”と称していましたが、言い得て妙。
この不思議な感覚がバンドの持つ得体の知れない邪悪な雰囲気を見事に表現しています。

初めのうちは比較的まともな演奏なのですが、曲が展開するにつれて徐々にアンサンブルが崩壊に向かって行きます。
Chris Witchhunter(Dr)がフィルインを入れるたびに拍が多くなったり少なくなったりを繰り返し、そのうちにリズムがひっくり返ります。
ここまで崩壊すると最早演奏を続けることが不可能かと思いきや、何故かキメの部分で全員のリズムがピッタリと合って何事も無かったかのように曲が進みます。
これを奇跡と呼ばずしてなんと呼べば良いのでしょうか。

レコーディングスタジオで録音したことが信じられないような音質の悪さもまた魅力です。
段ボールを叩いているようなドラムのサウンド以外は何を弾いているのか聞き取れないギターとベース。
アンダーグラウンドな雰囲気を出すにはこれ以上最適なロケーションはありません。

事実、本人達でさえレコーディングをどのように行なったのかは殆ど覚えていません。
メンバー全員が泥酔しており、スタジオのスタッフ達も大麻でトリップしていた中でいつの間にか完成していたとのこと。
更にTom Angel Ripper以外のバンドメンバーは全員この世を去ってしまったので、レコーディングの光景を明確に記憶している人間がいないのです。

再現など不可能な、この瞬間だからこそ成し得た奇跡のテイクです。
この楽曲は、長い歴史の中で数多くのエクストリームメタルバンド達に大きな影響を与え続けています。
初期ブラックメタルの歴史を紐解く上で、重要な名曲です。

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