ダーク・トランキュリティ / パニッシュ・マイ・ヘヴン (1995)
1989年にスウェーデンで結成されたメロディックデスメタルバンド。
1995年に発表された2枚目のアルバム[The Gallery]の1曲目に収録されています。
スウェーデンにおけるメロディックデスメタルの代表格としてシーンの形成に貢献したベテランバンドです。
フィンランドのレーベルSpinefarmと契約をして発表したデビューアルバムは、荒れ狂う嵐のようなアンサンブルと抒情的なメロディの融合が話題を呼びました。
ですが、Anders Fridén(Vo)が同郷の[In Flames]へ引き抜かれるアクシンデントに見舞われます。
急遽ギタリストだったMikael Stanneをシンガーへとコンバートし、新メンバーとしてFredrik Johanssonを迎え入れて何を乗り切りました。
メンバーを新たに、レーベルもフランスのOsmoseへと移籍して発表された本作はメロディックデスメタルの名盤として語り継がれる作品となります。
その中から、バンド初期の代表曲として人気の高いナンバーがこちらです。
冒頭で流れるバロックミュージックのような抒情的なギターリフには面食らいました。
曲全体が全てギターソロと言って良いほど、悲しく絶望的な旋律で彩られています。
当時のデスメタルバンドからここまでメロディアスなフレーズが飛び出すこと自体が稀なことでした。
そこにデスメタルらしい荒れ狂うドラムパートが加わることがバンドが持つ唯一無二の個性となっています。
メインソングライターの一人であるAnders Jivarp(Dr)のプレイは、テンポキープをあまり気にせず曲展開に応じて緩急自在に操るプレイが魅力です。
時にはアンサンブルから崩れ落ちてしまう危なっかしい場面も見られるのですが、そこが緊張感あふれるプレイと解釈できてしまうのが不思議なとことです。
展開が非常に複雑で、同じパートの繰り返しはほとんどありません。
いくつもの曲をパッチワークで繋げたかのように目まぐるしく変化するアレンジには、プログレッシブメタルからの影響が伺えます。
それでいて取っ付き辛さを感じさせない要因は、実はベースパートに隠されていました。
よく聴いてみると、ギターパートの裏でメロディを奏でていることに気がつきます。
まるでリード楽器が3本で複雑なハーモニーを奏でているかのような、高度に構築されたアンサンブルです。
最後に、この時期にしか聴くことのできないMikael Stanneの咽び泣くようなデスボイスは鬼気迫るものを感じます。
楽曲の持つ絶望的な雰囲気を何倍にも増幅させる魔法のようです。
この数年後に喉を壊してからは発声方法を変えて安定したパフォーマンスを聴かせてくれますが、それとは違う身を削って絞り出している声は唯一無二です。
この曲でDark Tranquillityの名は日本にも広く知れ渡るようにもなりました。
初期のメロディックデスメタルを象徴する名曲です。
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