【曲紹介】King Diamond / Abigail

キング・ダイアモンド / アビゲイル (1987)

1985年にデンマークで結成されたヘヴィメタルバンド。
1987年に発表された2枚目のアルバム[Abigail]の8曲目に収録されています。

デンマークが世界に誇るホラーシンガーのKing Diamond(Vo)によるバンドです。
80年代初頭にホラーメタルのパイオニアとして注目を浴びた[Mercyful Fate]は、メンバーの衝突で2枚のアルバムをリリース後に空中分解。
中心人物のKing Diamond(Vo)は、バンドメンバーのMichael Denner(Gt)とTimi Hansen(Ba)と共にAndy LaRocque(Gt)とMikkey Dee(Dr)を迎えて自身のバンドを結成します。
所属していたRoadrunner Recordsよりお披露目となったEPを挟んで、デビューアルバムの[Fatal Portrait]をリリース。
[Mercyful Fate]の3枚目のアルバムに収録予定だった楽曲を多数含んでおり、スウェーデンの音楽チャートでは33位に入るヒットを記録しました。
それに手応えを感じたバンドは、King Diamond(Vo)の描いたストーリーに基づくコンセプトアルバムである本作を製作。
本格的なホラー小説のような内容とメロディアスで力強い楽曲は、最高傑作と絶賛するファンも多くいる名盤となりました。
その中から、クライマックスとも言えるタイトルトラックがこちらです。

ギターの奏でるアラビア風の怪しいメロディラインと、引きずるようにヘヴィなリズムが特徴です。
緊張感のあるリフからは追い立てられているような焦燥感が感じられ、ホラー仕立てのストーリーの演出に一役買っています。

そこに乗るKing Diamond(Vo)の一人二役とも言えるパフォーマンスは圧巻です。
低音の濁声と超音波のような裏声を自由自在に使いこなしており、ミリアムの亡骸を乗っ取ったアビゲイルが主人公と会話をするシーンをたった1人で表現しています。
素っ頓狂とも解釈できる極端な落差は、リスナーに良くも悪くも強烈なインパクトを残します。
ある者はその魔力に魅入られ、またある者は理解ができず呆然とするのみ。
まさに、孤高の存在と言えるでしょう。

コンセプトやKing Diamond(Vo)のパフォーマンスばかりが注目されがちですが、楽曲は無駄の無いシンプルなアレンジです。
クラシカルなフレーズが満載のメロディアスなギターソロは言わずもがな、要所で聴ける叙情的なツインリードのハーモニーは恐怖感よりも美しさが優っています。
テクニカルなユニゾンプレイもチラリと顔を出し、バンドの強固なアンサンブルもしっかりとアピールできています。

これは、Mikkey Dee(Dr)による屋台骨を支えるパワフルなドラミングあってのもの。
生まれ故郷のスウェーデンから野心を持ってデンマークに移住した彼によるスネアの一撃は、重く引きずるようなリズムをしっかりと支えながr強烈なアクセントを叩き出しています。
表舞台でのプレイを始めてほんの数年というのに、目を見張る逸材です。
後に[Don Dokken]を経て[Motorhead]に電撃加入し、2016年からは[Scorpions]に加入するという輝かしいキャリアのスタートラインとも言える名演です。

ホラーメタルを発展させ、ヘヴィメタルの世界にコンセプトアルバムを持ち込む布石となった名曲です。
彼らを崇拝するフォロワー達は、今後も時代を超えて生まれ続けるでしょう。

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