アモルフィス / アゲインスト・ウィドウズ (1996)
1990年にフィンランドで結成されたヘヴィメタルバンド。
1996年に発表された3枚目のアルバム[Elegy]の2曲目に収録されています。
発表する作品はほぼ間違いなくフィンランドの音楽チャートでトップ3にランクインする国民的人気バンドです。
デビュー当時はオーソドックスなデスメタルをプレイしておりましたが、前作の[Tales From the Thousand Lakes]では重く引きずるようなビートとTomi Koivusaari(Vo/Gt)の強烈なグロウルに叙情的なメロディを掛け合わせた独自のスタイルを打ち出します。
しかし、アルバム発表後に大幅なメンバーチェンジが起こります。
キーボードがKasper MårtensonからKim Rantalaに、ドラマーはJan Rechbergerから[Stone]で活躍したPekka Kasariにチェンジ。
そして、クリーンボーカル担当のPasi Koskinengが新たに加わりました。
彼が加入したことで、完全にデスメタルからは脱却。
完成したニューアルバムは、民謡の叙情的なメロディとヘヴィメタルをミックスした全く新しいスタイルを作りました。
その中から、ライブでは必ず演奏されるファンからの人気が高いナンバーがこちらです。
冒頭で流れるフィンランドの民謡からインスパイアされたであろうギターリフが強烈です。
[Iron Maiden]から影響を受けたであろうツインリードは、芋臭くて聴いていられない一歩手前で踏みとどまっており、そのギリギリのバランスがたまらなく魅力的です。
中毒性の高い旋律は、まるで村の祭りで流れるダンスミュージックのよう。
デスボイスとクリーンボイスの掛け合いが全く違和感なく溶け込んでおり、まさにツインボーカルのスタイルを前提で作られた曲であることがよくわかります。
Pasi Koskinengの掠れた声が曲調と非常にマッチしており、少し引っ込んだミックスと相まって楽器の一部のようにアンサンブルに溶け込んでいます。
それとは逆に歌が入ってもバックでは常にギターのメロディが流れ続けているので、まるでシンガーが3人いるかのような錯覚を覚えます。
デスメタルから完全に脱却できていると感じさせる点として、ヴィンテージなギターソロも重要な要素です。
70年代のサイケデリックロックを彷彿とさせるワウを効かせたプレイは、同郷の先輩である[Kingston Wall]からの影響でしょう。
良いものは意欲的に取り入れていく攻めの姿勢を感じさせてくれます。
ベーシックトラックではメトロノームを用いずにライブレコーディングを行ったことも曲に強いエネルギーをもたらしました。
ラストにかけて徐々にテンポアップしていくのも、本能に任せて踊り狂う民族のダンスを表現したのかもしれません。
土着的なダンスは一定のテンポを保つものではありません。
まるで生き物のようにテンションを自由自在に操る、バンドアンサンブルの醍醐味がここにあります。
この新しい試みは大成功し、バンドの方向性が完全に固まるきっかけとなりました。
国民的人気バンドへの階段を駆け上がるきっかけとなった、記念碑的名曲です。
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