【曲紹介】At Vance / Only Human

アット・ヴァンス / オンリー・ヒューマン (2002)

1998年にドイツで結成されたメロディックメタルバンド。
2002年に発表された4枚目のアルバム[Only Human]の2曲目に収録されています。

ドイツ出身のネオクラシカルメタルの代表格として日本でも一定の知名度を持つベテランバンドです。
プログレッシブメタルユニットである[Centers]がバンド形式に移行するにあたって結成。
地元ドイツのインディーズレーベルShark Recordsと契約を交わして発表した3枚のアルバムは、日本を中心にバンドの想像を超えた好セールスを記録します。
そこに当時[Edguy]を売り出して勢いづいていたAFM Recordsより声がかかりレーベルを移籍します。
前作まではOlaf Lenk(Gt)がセルフでレコーディングを行っておりましたが、本作では元[Heaven’s Gate]のギタリストで[Angra]や[Rhapsody]、[Kamelot]を手がけたプロデューサとして頭角を表し始めたSascha Paethがエンジニアで参加しています。
そのためにサウンドも垢抜けてゴージャスなものとなり、バンドの最高傑作として挙げるファンも多くいる代表作となりました。
その中から特に人気の高いタイトルトラックがこちらです。

キャッチー且つヘヴィなギターリフが印象的で、前のめりのビートがグイグイとリズムを前に引っ張るアップテンポのナンバーです。
曲のアレンジも極めてシンプルであり、ネオクラシカルメタルが陥りがちな曲は派手だけれど印象に残らない弱点も全くありません。

この曲の鍵になっているのが、[Centers]時代からOlaf Lenk(Gt)と共にバンドを支えているフロントマンのOliver Hartmann(Vo)の存在です。
Jeff Scott Sotoにも似たハスキーな声質が魅力的で、広い声域と安定した音程を駆使して楽曲をドラマチックに彩ります。
ギターリフのメロディをなぞるだけの極めてシンプルなサビを退屈だと思わせないのは、彼の力量あってのもの。
曲のアウトロに差し掛かる部分では重ね録りをした絶唱を聴けるのですが、シャウトを交えたアグレッシヴなパフォーマンスは彼のキャリア全体を見てもベストと言えるのではないでしょうか。
この声無しではここまで名曲に仕上がらなかっただろうと断言できる名演です。

Olaf Lenk(Gt)のギタープレイも強引な速弾きは最小限に、メロディアスなソロをストーリー性たっぷりに披露しており好感が持てます。
卓越したテクニックを持ち合わせていても、あくまでもプレイを盛り上げるエッセンスとして適切な量を盛り込む奥ゆかしさ。
このあたりは以前の彼とは全く違うアプローチなので、もしかしたら更なるセールスを期待してアプローチを変えたのかもしれません。

メロディアスでテクニカル、更には卓越したシンガーまで有するメロディックメタルの理想系に仕上がりました。
残念ながらOliver Hartmann(Vo)はソロシンガーとしてのキャリアを築くために脱退してしまいますが、最高の置き土産とも言える名曲です。

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