【曲紹介】Venom / Black Metal

ヴェノム / ブラック・メタル (1982)

1978年にイングランドで結成されたヘヴィメタルバンド。
1982年に発表された2枚目のアルバム[Black Metal]の1曲目に収録されています。

エクストリームメタルの始祖と呼ばれ、過激なスタイルの基礎を作り上げた伝説のバンドです。
デビュー作の[Welcome To Hell]は、当時としては強烈なスピードとアグレッションで世界中のリスナーに衝撃を与えました。
その中からは、Venomよりも過激な悪魔崇拝をテーマにしたサウンドを追求するバンドも現れます。
それらはブラックメタルと呼ばれ、90年代には北欧各国でアンダーグランドなシーンが築かれました。
その語源ともなりバンドの最高傑作とも言われる名盤から、オープニングを飾るタイトルトラックがこちらです。

驚くことに、後にスラッシュメタルと呼ばれるようになったバンド達と同じことをこの時代にやっています。
海を超えたアメリカでスラッシュメタルの最高峰と呼ばれる[Mettalica]や[Slayer]がアルバムデビューをするのは、1983年の中頃から後半にかけてのこと。
この頃はまだレコード契約すら無い一介のアマチュアバンドでした。
その事からも、この曲が革新的かが理解できると思います。

16分音符でザクザクと刻まれるギターリフはこの時代からポピュラーでしたが、驚くべきはそのスピード。
他のバンド達の1.5倍ぐらいのスピードで演奏されています。
当時は驚異的なスピードナンバーと言われた[Motorhead]の[Ace Of Spads]や[Iron Maiden]の[Purgatory]の更に上を行くテンポの速さに、当時のリスナー達は腰を抜かしたのではないでしょうか。

サタニックな邪悪なイメージもサウンドに表れています。
チェーンソーで鉄板を切断する音を加工したSEをバックに徐々にフェードインするギターリフは、まさしく地獄の底から響く呻き声です。
前作よりはいくらかマシながらも劣悪な音質は、アンダーグランドな怪しい雰囲気に溢れています。
Cronos(Vo/Ba)の汚く吐き捨てるヴォーカルは、まるで呪詛を唱えているかのようです。

ここまで邪悪な要素が詰まっているのでさぞかし恐ろしいバンドかと思えば、実はそんなことは全く無いところもこのバンドの魅力です。
まるで中学生が書いたような馬鹿馬鹿しい歌詞や、斧や髑髏の杖を持ってポーズを取るアーティスト写真は非常にコミカル。
演奏面も冷静に聴くとレコードデビューするバンドの水準には達していません。
特にリズムキープすらおぼつかず、ツインバスの連打になると明らからにテンポが落ちるAbbadonの下手糞なドラムは微笑ましさすら感じます。

この親近感がVenomが多くのファンを獲得できた要因だと思います。
一部のメディアは彼らをふざけたコミックバンドだと嘲笑しましたが、ヘヴィメタルの持つ悪魔的なイメージをこれほどわかりやすく伝えたバンドは他にありません。
商業的な成功は逃しましたが、世の中に星の数ほどいるエクストリームメタルバンドでVenomからの影響を受けていないバンドは存在しません。
アンダーグランドなゴッドファーザーが残した、歴史的名曲です。

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