エーシー・ディーシー / タッチ・トゥー・マッチ (1979)
1973年にオーストラリアで結成されたハードロックバンド。
1979年に発表された6枚目のアルバム[Highway To Hell]の4曲目に収録されています。
シンプルで骨太なハードロックサウンドを結成当初から貫き、世界中で絶大な人気を誇るバンドです。
結成当初はオーストラリア国内でローカルな活動をしていましたが、1976年にメジャーレーベルのAtlantic Recordsと契約を交わすと状況は一変。
大物アーティストの前座としてスタジアムでの演奏機会に恵まれます。
大勢のオーディエンスを前にしてのエネルギッシュなライブパフォーマンスが認められ、1978年発表の[Powerage]は過去最高の売り上げを記録。
バンドは一旦MalcomとAngusの実兄であるGeorge Youngのプロデュースから離れ、当時売り出し中だったJohn Matt Langeを新たなプロデューサーに迎えます。
この起用は大成功となり、発表された本作はBillboardチャートで17位に輝きました。
バンドの出世作でありBon Scott(Vo)の遺作ともなった名盤から、キャッチーなサビが印象的なナンバーがこちらです。
前作までは泥臭くブルージーなハードブギーが根底にあるサウンドでしたが、ここにきてスタイリッシュで整合感のあるサウンドに方向転換をしました。
シンプルで音の隙間の多いアンサンブルや、メロディアスなコーラスが印象的なサビを聴くと[Aerosmith]や[Kiss]のような当時のアメリカでメインストリームだったサウンドを意識していることがわかります。
それにしても、Bon Scott(Vo)がここまで器用なシンガーだったのかと驚かされました。
メロディラインをしっかりと歌いこなすスキルを持っています。
酔っ払いが喚き散らしているようだと称される破天荒なパフォーマンスが人気だった彼のイメージからは想像できません。
ですがアイドル系ポップグループの[The Valentines]でシンガーをしていた過去もあり、原点に戻ったと解釈すれば納得できます。
バンドの顔であるギターサウンドにも変化が見られます。
これまでのリフで押すスタイルではなく、普段は歌を活かすバッキングに徹しながらもサビで強烈なパワーコードをかき鳴らす手法。
これは80年代のヒット曲でよく使われている”イントロは落ち着いているけれど徐々に盛り上がり、サビで一気に解放”というリスナーのワクワクする気持ちを掻き立てる計算されたアレンジです。
これはRobert John “Mutt” Langeの卓越したセンスの賜物でしょう。
彼が数年後に手がけた[Foreigner]、[Def Leppard]、[The Cars]、[Bryan Adams]が立て続けにヒットを飛ばした。
贅肉を削ぎ落としたシンプルなアンサンブルと観客と一体化できるキャッチーなサビ。
そこんに向けての計算された盛り上がりを演出すスタイルは、アリーナロックと呼ばれて80年代に一世を風靡しました。
この曲は、その原型と呼んでも差し支えないでしょう。
その影響か、Anguns Young(Gt)のギターソロも普段よりエモーショナルです。
巨大なアリーナで花道に躍り出て、お決まりのステップで弾きまくる姿が目に浮かんできます。
ちょうどこの頃、ロンドンではNWOBHMのムーブメントが巻き起こりました。
いくつものヘヴィメタルバンドがデビューしましたが、その多くがAC/DCからの影響を口にしていました。
このサウンドを聞けばそれも納得です。
あまり話題に上がらずライブでもほとんど演奏さえれませんが、これだけ長い歴史を持つバンドなのでそういう曲が存在するのは致し方ないこと。
ですが、アルバムの流れで聴くと一際耳に残る隠れた名曲です。
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