ソドム / ニュークリア・ウィンター (1987)
1981年にドイツで結成されたスラッシュメタルバンド。
1987年に発表された2枚目のアルバム[Persecution Mania]の1曲目に収録されています。
ドイツにおけるスラッシュメタルバンドの代表格であり、[Destruction]や[Kreator]と共にシーンを作り上げてきたバンドです。
活動初期は[Venom]からの影響が強いスピードメタルをプレイしていました。
デビューEPとファーストアルバムはアンサンブルが崩壊した滅茶苦茶な内容ながらも、独特の疾走感やサタニックな雰囲気がマニアの間で話題となります。
しかし、1987年にFrank Blackfire(Gt)を迎えて発表したEP[Expurse Of Sodomy]からは方向性が大きく転換します。
[Slayer]に影響を受けた本格的なスラッシュメタルとなり、サタニックな雰囲気は払拭されて社会問題や戦争をテーマを歌詞に取り上げるようになります。
新しい布陣で作成されたフルアルバムである本作は、アンサンブルの整合性が増して劣悪だったサウンドプロダクションも飛躍的に改善。
リーダーのTom Angelripper(Vo/Ba)をして”本当の意味でのSODOMのデビューアルバムだ”と称される名盤となりました。
その中から、ライブでは必ず演奏される爆裂な勢いを持ったスラッシュナンバーがこちらです。
ザクザクと刻まれる高速リフと極端に前のめりのドラムのビートがあまりにも強烈。
Frank Blackfire(Gt)の若干テンポに追いつけていないラフなリズムの刻みとChris Witchhunter(Dr)の暴走機関車のようなドラミングが混ざり合い、凄まじい化学反応を起こしています。
一瞬の気の緩みがアンサンブルの崩壊を招きかねないギリギリの駆け引きによる、体を無理矢理引っ張られるような独特のスピード感がたまりません。
この独特のフィールはそれぞれのパートのリズムキープが不十分なことが原因で起こっているのですが、勢いを何よりも重視するスラッシュメタルにおいてはプラスに働いています。
演奏テクニックの向上と共に失われてしまう奇跡的なバランスの元に成り立つもので、意図的に出せるものではありません。
スラッシュメタルバンドとして再出発を果たした発展途上の時期だからこその奇跡のテイクです。
よく聴くと爆走一辺倒ではなく、中盤ではビートをチェンジしたりギターソロでは別のリズムが登場するなど曲構成にも工夫が凝らされています。
前年に発表されて世界中のスラッシュメタルファンを虜にした[Slayer]の[Angel Of Death]と展開が非常に似ており、彼らのような存在になりたいと強く願う姿勢がよく現れています。
ただの劣化コピーとならなかったのは、Tom Angelripper(Vo/Ba)による低音で吐き捨てる邪悪なヴォーカルスタイルと個性的なアンサンブルのおかげでしょう。
特にブレイク後に加速する際のドラムカウントでチャイナシンバルとバスドラムの連打を用いるプレイは他のバンドには無いユニークなアプローチです。
ライブではこの曲のイントロが鳴るだけで、オーディエンスからは一際大きな歓声が沸き起こります。
ジャーマンスラッシュを代表する名曲です。
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