【曲紹介】聖飢魔II / Jack The Ripper

聖飢魔II / Jack The Ripper (1986)

1982年に東京の早稲田大学で結成されたヘヴィメタルバンド。
1986年に発表された2枚目の大経典(アルバム)[THE END OF THE CENTURY]の5曲目に収録されています。

メンバー全員が悪魔を自称し、ヘヴィメタルを用いた布教活動というイメージ戦略で大きな商業的成功を収めたバンドです。
早稲田大学の音楽サークル内で結成され、バンドコンテストで勝ち抜いて1984年にCBSソニー傘下のFITZBEATよりメジャーデビューが決定。
デビュー大経典のレコーディングを開始する直前、偲ぶ仮の姿での生活を望んだバンドの創設者であるダミアン殿下(Gt)をはじめとする構成員達が相次いで脱退してしまいます。
構成員補充のために急遽オーディションを行なうも、レコーディングまでに構成員を集めることはできませんでした。
そのため、1985年に発表された地球デビュー大経典[聖飢魔II〜悪魔が来たりてヘヴィメタる]はスタジオミュージシャンの力を借りてのレコーディングとなりました。
にも関わらず日本のヘヴィメタル史上初めて10万枚を超える大ヒット作となりバンドは知名度を大きく上げます。
オーディションによってジェイル大橋代官(Gt)とライデン湯沢殿下(Dr)を新たに迎え入れ、構成員が揃ったことでバンド自身のセルフプロデュースでの本作のレコーディングを開始。
バンドを象徴する代表作となった大経典から、ダミアン浜田殿下が聖飢魔IIを結成する以前に作曲した[衝動殺人者]をリメイクしたナンバーがこちらです。

作曲された1982年当時、NWOBHMのムーブメントに乗って日本に渡ってきたブリティッシュメタルに強い影響を受けています。
デーモン閣下の短いモノローグに続くシンプルなミドルテンポのイントロは、まるで贅肉を削ぎ落とした[British Steel]を発表した頃の[Judas Priest]のよう。
かと思えば、女性の悲鳴に続いて一気にテンポアップする展開は非常にドラマチック。
特にメインテーマを奏でる[Iron Maiden]のような美しいツインリードのハーモニーは、後の彼らの楽曲ではあまり聴くことのできないこの時期特有のものです。

ギターソロでは[Loudness]の[Crazy Doctor]から影響を受けたであろうクラシカルなフレーズが聴けるのもご愛嬌。
全体からほのかに漂う素人臭さにはしっかりとした理由があります。
この曲はダミアン浜田殿下が初めて作曲したヴォーカル入り楽曲であり、最初に披露してからタイトルと歌詞の一部以外は殆どアレンジを加えずにレコーディングを行いました。
そのため、プロの手がほとんど加わっていない状態です。

更に当初はシングル[蝋人形の館]のB面専用曲として考えられており、アルバムのLP盤への収録は見送られました。
CD版とカセットテープ版にのみ収録されているボーナストラック的な存在なので、製作陣もこれでOKを出したのでしょう。

ですが、この曲はミサ(ライブ)でこそ真価が問われます。
デーモン閣下が信者(ファン)対して次の犠牲者を指定するコールアンドレスポンス。
原曲よりも遥かに速いテンポで演奏される攻撃的なビート。
シンプルな曲だからこそ映える魅力的なアレンジが施されており、イントロのドラムビートが聞こえるだけで大きな歓声が上がる定番曲となっています。

悪魔に魅入られたシリアルキラーの脳内に人の命を奪えと命令する声が響く物騒なテーマでありながら、恐ろしさをそこまで感じさせないのは甘いメロディアスなギターとデーモン閣下のどこかコミカルさを感じさせるパフォーマンスのかげでしょう。
アルバムとミサ(ライブ)で二度美味しい、根強い人気を持つ名曲です。

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