テスタメント / ロウ (1994)
1983年にアメリカのカリフォルニア州で結成されたスラッシュメタルバンド
1994年に発表された6枚目のアルバム[Low]の1曲目に収録されています。
アメリカ西海岸のスラッシュメタルを代表するベテランバンドです。
攻撃的なスラッシュメタルにメロディアスなギターソロを取り入れ、その独自のサウンドが多くのファンを獲得しました。
ですが、1988年の[Soul of Black]あたりから徐々にスピードを抑えてメロディを聴かせるスタイルへと方向を転換。
1992年に発表した[The Ritual]は過去最高の枚数を売り上げてBillboardチャートでも55位を記録しますが、リリースツアー中にAlex Skolnick(Gt)とLouie Clemente(Dr)が相次いで脱退。
サポートメンバーの手を借りてツアーを乗り切り、新メンバーには[Obituary]や[Death]での活動が有名なJames Murphy(Gt)と元[Exodus]のJohn Tempesta(Dr)を迎えます。
ラインナップを新たに、ニューアルバムのレコーディングを開始。
完成した本作は、インダストリアルロックやグルーヴ・メタル等のエッセンスを積極的に取り入れたバラエティ豊かなものになりました。
その中から、アルバムのオープニングを飾るアグレッシブなナンバーがこちらです。
壁のように音が迫り来る迫力満点のイントロに圧倒されました。
ザクザクと刻まれるクランチリフとヘヴィにうねるリズムが心地よく、当時は日本のメディアからモダン・ヘヴィネスと呼ばれていたグルーヴ・メタルの要素が多分に感じられます。
1994年当時は[White Zombie]がメジャーレーベルと契約し、[Pantera]がFar Beyond Drivenで全米1位を獲得
そして[Vio-Lence]のRobb Flynnが[Machine Head]で鮮烈なデビューを飾ったりと、ヘヴィメタルシーンも激動の時代を迎えていました。
80年代に人気を集めたスラッシュメタルバンド達の中には時代のトレンドを感じてスピードを抑えたバンドも多くありましたが、成功した例は少数にとどまりました。
殆どは魅力だった部分を封じ込める結果となり、ファン離れを招きます。
ですが、数少ない成功例がこの曲です。
新たに加入したメンバー達の個性を理解し、それを最大限に活かすアレンジによって化学反応が生まれました。
James Murphy(Gt)が沈み込むような重低音サウンドを持ち込み、楽曲全体に独特の粘り気をもたらしました。
数多くのデスメタルバンドを渡り歩き、培ってきた技術の賜物です。
これに影響され、Chuck Billy(Vo)のヴォーカルスタイルにも大きな変化がありました。
楽曲の雰囲気と合うように、グロウルを取り入れたりと過去作では考えられないほど攻撃的になりました。
アンサンブルも段違いにタイトになりました。
これは間違いなく、もう1人の新メンバーであるJohn Tempesta(Dr)がもたらしたものでしょう。
前任者のLouie Clemente(Dr)はパワーと勢いで押し切る、典型的なスラッシュメタルのプレイを得意としていました。
それに対してJohn Tempesta(Dr)は、タイトなリズムと硬く抜けの良いサウンドが魅力のドラマーです。
彼の得意とするプレイにバンドのスタイルを合わせたことは想像に難くありません。
バンドが持ち合わせていたヘヴィミュージックへの拘りと、それに相応しいメンバーが集まって大成功をした好例ではないでしょうか。
モダンな次世代スラッシュメタルを代表する名曲です。
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