テスタメント / ドリーム・ディシーバー (2020)
1983年にアメリカのカリフォルニア州で結成されたスラッシュメタルバンド
2020年に発表された12枚目のアルバム[Titans of Creation]の3曲目に収録されています。
アメリカ西海岸のスラッシュメタルを代表するベテランバンドです。
80年代から90年代前半にかけてベイエリアのスラッシュメタルシーンの中心として人気を博しますが、2000年に入るとJames Murphy(Gt)が脳腫瘍に倒れて脱退。
2001年には中心人物のChuck Billy(Vo)も癌に侵されてバンド存続の危機に瀕しましたが、同じシーンで活動してきたバンド達がチャリティーで彼を支えて病を克服します。
2008年年以降は4年に1枚のペースでアルバムをリリースしながら活動を続けます。
前作の[Brotherhood of the Snake]から4年ぶりの本作は、1992年に発表した[Ritual]以来28年ぶりにメンバーチェンジ無しで発表された作品となりました。
その中から、テクニカルで複雑なリフとキャッチーなメロディが印象的なナンバーがこちらです。
まるで[Megadeth]や[Annihilator]を彷彿とさせるリフワークは、ここ数作でのトレードマークになりつつあります。
スピードはグッと抑えていますが、代わりに高度に構築されたアンサンブルにリスナーの心はガッチリと掴まれます。
また、Chuck Billy(Vo)もドスの効いた声ながらもメロディラインを丁寧に歌えており、幅広いメタルファンにアピールできる要素は一通り揃っていると感じました。
キャッチーなサビがとても耳に残りますが、それもそのはず。
[Scorpions]の初期の名盤[Taken By Force]に収録されている[She The Man He The Woman]のメロディにソックリです。
古くからのファンの視点で見ても、なかなか通なところから引用するものだと嬉しくなる要素です。
この曲の強烈なリズムを支えるのは、[Dark Angel]や[Death]、[Strapping Young Lad]、[Fear Factory]等を渡り歩いて来たGene Hoglan(Dr)
そして、[Sadus]や[Death]、[Iced Earth]をはじめ数えきれないほどの作品に参加している、Steve Di Giorgio(Ba)です。
この2人のコンビネーションの素晴らしさは[Death]の名盤[Individual Thought Patterns]で証明されていますが、あの作品から27年経過したこの曲でも見事に輝いています。
機械のような正確なリズムで余計な装飾は最小限にシンプルなプレイに徹しているようにも聴こえますが、よく聴くと休符の使い方が実に巧みです。
縦のラインを合わせて丁寧なプレイは、よっぽど息を合わせないと困難です。
彼らの土台があればこそ、複雑なリフやエモーショナルなギターソロも活きてくるというもの。
まさに、2000年以降のTestamentには必要不可欠なリズムセクションです。
元々メロディを全面に押し出したスラッシュメタルをプレイしていたバンドですが、ここにきてアグレッションを損なわずにメロディアスな面をさらに強調してくれました。
インテレクチュアルスラッシュメタルの括りでも語ることのできる名曲です。
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