ディー・ジー・エム / トラスト (2013)
1994年にイタリアで結成されたプログレッシブメタルバンド。
2013年に発表された8枚目のアルバム[Momentum]の2曲目に収録されています。
テクニカルなアンサンブルとメロディックなサウンドがマニアの間で人気のあるベテランバンドです。
作品を発表する度にメンバーチェンジを繰り返しながら地道な活動を続けて人気を伸ばしていきます。
2009年に新しいフロントマンMark Basile(Vo)を迎えての[Frame]を、翌年にはバンド15周年を記念したライブ映像に加えて過去の名曲の再録を新曲も交えて収録した[Synthesis]を立て続けにリリース。
ファンからの期待が高まる中、前作と同じラインナップでニューアルバムのレコーディングを開始します。
メンバー間で濃密なコミュニケーションをとった上でたっぷりと時間をかけて制作された4年ぶりの作品となる本作は、過去作を軽く凌駕する洗練されたメロディアス且つテクニカルな名盤となりました。
その中から、キャッチーなサビがとても印象的な人気曲がこちらです。
ザクザクと勢いよく刻まれ、時にはZakk Wylde顔負けの厳ついピッキングハーモニクスを交えるギターリフに衝撃を受けます。
ベテランバンドの風格など脱ぎ捨て、隙あらば音数を詰め込んでくるプレイは爽快そのもの。
作曲だけでなく、レコーディングのエンジニアやミックス作業から総合プロデュースまで全てを手がけるSimone Mularoni(Gt)の情熱が迸っています。
火を吹きそうなフレーズを連発し、Emanuele Casali(Key)と猛烈なソロバトルを繰り広げる展開は手に汗握る緊張感に満ちています。
もちろん、彼のプレイに寸分狂わぬ鉄壁のアンサンブルを繰り広げるリズムセクションもお見事。
プログレッシブメタルらしい素早いパッセージのフレーズにも華麗なユニゾンをサラリとやってのけます。
曲全体に漂う心地よいスピード感を演出するには必要不可欠な鉄壁の土台です。
これだけテクニカルな演奏を主軸にしながらも難解にならずに済むのは、Mark Basile(Vo)の惚れ惚れする歌いっぷりがあるからこそ。
セクシーな中音域からよく伸びるハイトーンまでを自在に使いこなし、曲全体をカラフルに彩る歌声はバンドの持つ雰囲気をもう一段階ポップなものに押し上げました。
特にサビのメロディラインは強烈です。
まるでメロディアスハードのバラードかと勘違いするような胸が締め付けられるエモーショナルなメロディラインは、プログレッシブメタルでは滅多に聴けるものではありません。
アグレッシブな部分を失わずにサラリと聴かせてしまうアレンジ能力には並ならぬセンスを感じました。
テクニカルなアンサンブルの応酬、そして大衆受けする卓越した実力を持つシンガーのメロディアスな歌唱。
この2つが混ざり合って凄まじいケミストリーが起こりました。
[Dream Theater]が打ち出したプログレッシブメタルに、また別の側面であるヨーロピアンな雰囲気が漂う繊細なエッセンスを見事に混ぜ合わせて独自の路線の開拓に成功しました。
最早ジャンルを超越したイタリアンメタル史に輝く名曲と言っても過言ではないでしょう。
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