メタル・チャーチ / キリング・ユア・タイム (2016)
1980年にアメリカのサンフランシスコで結成されたヘヴィメタルバンド。
2016年に発表された11枚目のアルバム[XI]の2曲目に収録されています。
アメリカにおけるヘヴィメタルシーンの活性化に大きく貢献したベテランバンドです。
80年代から90年代初頭にかけて名盤と呼ばれる作品を連発して多くのファンを獲得しますが、1996年に売り上げの不振を理由に解散してしまいます。
ですが、1999年にはオリジナルシンガーのDavid Wayneが復帰をして再結成を果たします。
この再結成自体は人間関係の問題で大失敗となりましたが、中心人物のKurdt Vanderhoofはこれに反発するかの如く自らのソロプロジェクトとしてMetal Churchを名乗っての活動継続を決意。
メンバーチェンジや活動休止を挟みながらもリリースとツアーを繰り返します。
2014年にはRonny Munroe(Vo)が自身の活動に専念するために脱退を表明しますが、なんと1988年から最初の解散まで在籍したMike Howeが電撃復帰。
23年ぶりに彼の声を封じ込めた本作は、Billboardチャートで57位とバンド史上最高の売り上げを記録しました。
その中から、スラッシーなギターリフが特徴のアップテンポナンバーがこちらです。
ザクザクと刻まれるシンプルなギターリフが実に心地よく、ここまでシンプルに仕上げて来たことにまずは驚かされます。
肩の力が抜けてリラックスした状態で作られた緩い雰囲気が感じられますが、これまでの作品に欠けていた余裕がここにはあります。
これも、旧知の間柄だったMike Howeが復帰したことも大きいでしょう。
彼の声が非常に冴え渡っています。
バンドを脱退と同時に音楽を完全に引退して大工へと転職していたのですが、そんな話をされなければ信じられないでしょう。
若い頃の声をそのまま保っています。
おそらくですが彼の声は天性のもので、絶好調時ならどんなにブランクがあってもすぐに出せるのでしょう。
彼の声を活かす曲のアレンジも見事です。
スピード感のあるリフとシンプルな構成、そしてシンガロングのできるキャッチーなサビが揃った理想のパワーメタルです。
あまり予算をかけていないペラペラな音質も、こういうスッキリとしたアレンジならば味として受け止めることができます。
個人的にはオーソドックスながらも心地よい人間的な跳ねを感じさせるドラムプレイが特にお気に入りです。
[Savatage]や[Trans Siberian Orchestra]で大活躍中のJeff Plateは、改めて名手だと思わせる名演です。
この曲は、レーベルからの圧力から解放されて思うがままに曲を書いて子供のようにはしゃぎながら録音することで生まれました。
その楽しさが音を通じてこちらに伝わってくるのがよくわかります。
単なる同窓会的なリユニオンではなく、現在進行形で活躍するバンドの活きた名曲です。
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