【曲紹介】Magnum / On a Storyteller’s Night

マグナム / ストーリーテラーズ・ナイト (1985)

1972年にイングランドで結成されたハードロックバンド。
1985年に発表された5枚目のアルバム[On a Storyteller’s Night]の3曲目に収録されています。

プログレッシブロックのエッセンスを取り入れたメロディアスな楽曲で人気を博したベテランバンドです。
初期の代表作[Chase the Dragon]が全英チャート17位を記録して順風満帆な活動をしていましたが、金銭トラブルでJet Recordsから離脱。
新たにFM Recordsと契約を結び、[Thin Lizzy]やPhil Lynottのソロを手がけたKit Woolvenをプロデューサーに迎えてニューアルバムのレコーディングに取り掛かります。
過去作にも増してゴージャスなサウンドが人気を呼び、ファンからは最高傑作と呼ばれることも多くある名盤となりました。
その中から、ライブの定番となった屈指の人気曲がこちらです。

静と動のコントラストを極限まで演出し、まるで5分間の短い映画を見ているようなストーリー性に富んだ展開です。
壮大なシンセのバッキングに合わせ、静かに語りかけるように歌うBob Catley。
その歌唱は徐々に熱を帯び、サビへ突入する直前になって一気にメラメラと燃え上がります。

英国特有の憂いを帯びたハスキーなハイトーンはブリティッシュロック最高の声と称するファンも多く、曲の持つストーリーを感情豊かに表現します。
サビでバンド全体が壮大にアンサンブルを始めたとしても、決して声を張り上げたりしません。
どっしり構えた貫禄のある歌唱で、内に秘めたる炎を静かに熱く燃やしています。

この曲のサビが強く印象に残るのは、アレンジセンスの賜物です。
AメロとBメロはシンセの伴奏に合わせた歌だけで構成されているので、サビのインパクトが何倍にも高まります。
足し算ではなく引き算の理論であり、ポピュラーミュージックのお約束の真逆を行くアレンジは見事。
同じくプログレッシブロックを下地にしたポップバンドの[Asia]とはまた違った上品で洗練された雰囲気を演出しています。

間奏部分から曲の本番を演出する展開も胸が熱くなります。
ここからは曲が盛り上がるばかり。
ラストでサビを繰り返すパートではシンセが徐々にゴージャスになっていき、まるで大団円を迎えるような爽快感があります。
静かに始まり、綺麗な上昇直線を描きながら盛り上がるダイナミクスの付け方は解っていてもなかなかできません。

ハードロックやプログレッシブロックを産んだイギリスが見せた意地を感じる名曲です。
メロディアスハードロックにおける最終目標であり、到達地点とも言えるでしょう。

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