アンセム / ブラック・アイド・タフ (1986)
1981年に東京で結成されたヘヴィメタルバンド。
1986年に発表された2枚目のアルバム[TIGHTROPE]の8曲目に収録されています。
日本のヘヴィメタルシーンにおける、関東の代表格とも言える非常に息の長いバンドです。
1985年のメジャーデビュー作が好評だった為、本作はレコーディングエンジニアとして数えきれないほどの作品を手がけ、HR/HMでは[Y&T]や[Blue Öyster Cult]、国内のバンドでは[EARTHSHAKER]の作品のエンジニアとして関わってきたKen Kessieを招き入れて作成されました。
デビュー後の精力的なツアーが結び、バンドとしての目覚ましい成長が手に取るようにわかる意欲作から、ラストを締めくくるパワフルなスピードナンバーがこちらです。
パワーコードを中心にかき鳴らされるギターリフが非常に野生的であり、こもり気味のサウンドと相まってハードコアな雰囲気も演出しています。
そこに前のめりでドタバタしたビートを刻むドラムが絡むことによって我武者羅で情熱的なリズムが生まれました。
この荒削りで強烈なリズムには、のし上がるチャンスを掴む為になり振り構わず前に進むバンドの姿勢がよく滲み出ており、心が動かされます。
それでいてある程度の整合性が感じられるのは、バンドの屋台骨である柴田直人の鉄壁のベースプレイのおかげです。
決して前には出ないけれども、完璧なリズムキープでバンドを引っ張りつつも要所要所でメロディアスなフレーズをさりげなく織り込んでくるツボをついたプレイは、このバンドに欠かせない絶対的な存在感を放っています。
坂本英三の歌も目覚ましい成長を遂げており、ドスの効いた声で情熱的な歌唱を披露しています。
前作では加入直後にレコーディングが控えていた為に、準備不足で実力を出しきれていませんでしたが、ツアーを重ねて徐々に才能を開花させました。
サビの部分で柴田直人とツインヴォーカルになるパートなどは、[SEX MACHINEGUNS]も[桜島]のBメロで引用をしたほどメロディアスであり、この曲を彩る非常に重要なファクターです。
この曲の雰囲気は、ある程度の成功をおさめて余裕の出てきたバンドに出せるものではなく、まだデビューして2年足らずのバンドが持つギラギラした野望あってものものです。
バンド側が不満を述べていたKen Kessieによるミックスも、この雰囲気を演出するのに非常に役になっていると感じました。
名作と呼ばれる作品に挟まれ、知名度の部分では一歩を譲る作品の中の曲ではありますが、自作での大きな飛躍を予感させる名曲です。
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