デス / レプロシー (1988)
1984年にアメリカのフロリダ州で結成されたデスメタルバンド。
1988年に発表された2枚目のアルバム[Leprosy]の1曲目に収録されています。
[Possessed]と並んでデスメタルのパイオニアとして知られているバンドです。
Chuck Schuldiner(Vo/Gt/Ba)とChris Reifert(Vo/Dr)のユニット形式でレコーディングをしたデビューアルバム[Scream Bloody Gore]は、スラッシュメタルに野獣の様な人間離れした咆哮をミックスした革新的なサウンドで多くのリスナーに衝撃を与えました。
しかし、アルバム発表後にChris Reifert(Dr)は地元のカリフォルニアで[Autopsy]を結成するために脱退。
フロリダに戻ったChuck Schuldinerは、元メンバーのRick Rozz(Gt)に加入を要請。
すると、Rickが当時在籍しており活動休止中だった[Massacre]のTerry Butler(Ba)とBill Andrews(Dr)も一緒に加入してライナップが揃いました。
メンバーを新たにMorrisound Studiosでレコーディングされた本作は、より複雑でエキサイティングな曲展開によって初期デスメタルのマスターピースとなりました。
その中から、オープニングを飾るタイトルトラックがこちらです。
複数の楽曲をパッチワークのように繋ぎ合わせたプログレッシブな展開が大きな特徴です。
1分20秒ほどのスローなパートから何の前触れもなくファストなリズムへチェンジし、また唐突にミドルテンポの別のリズムが登場します。
一聴すると整合性が無いように聴こえるのですが、パートごとに異なる色とりどりのリフが用意されていて驚くほど耳に残ります。
展開を激しく変化させるバンド多くいますが、この時代にここまでやっているバンドはなかなかいませんでした。
一般的にスピードナンバーは起伏が少ないと飽きられやすい傾向にあります。
インパクトのあるギターリフでもあれば話は別ですが、そうでない場合は楽曲ごとの区別をつけることすら困難です。
彼らの凄いところは、曲展開を凝らしたばかりかインパクトのあるギターリフまで繋ぎ合わせたところです。
デスメタルは歌のメロディラインを排除せざるを得ないため、リズムでの勝負を余儀なくされます。
それをよく理解した上で、ここまでリスナーを飽きさせない工夫が凝らせるのは大したものです。
速いパートはより速く、遅いパートはより遅く聴かせるためにリズムチェンジのタイミングも計算されています。
リズムやフレーズは極めてシンプルであっても、6分を超える長さの楽曲を退屈させずに聴くことができるのは流石です。
闇雲にパートを組み立てていくのではなく、リズムを感じる体感速度を予測して組み立てて行かなかればこうはなりません。
数年後にテクニカルデスメタルをジャンルとして根付かせた才能の片鱗を感じることができました。
まだスラッシュメタルの原型が色濃く残るデスメタルのプロトタイプ。
世界で大きなムーブメントを起こす前夜の空気を感じさせる名曲です。
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