キャメル / ラヤダー街へ行く (1975)
1971年にイングランドで結成されたプログレッシヴロックバンド。
1975年に発表された3枚目のアルバム[The Snow Goose]の3曲目に収録されています。
プログレッシブロックの中でも、特に抒情的なメロディを得意としているベテランバンドです。
1973年のデビュー以降、毎年1枚のハイペースで作品をリリースしながら活動。
本作はアメリカの作家[Paul Gallico]が書いた短編小説から着想を得て、全編インストゥルメンタルでのコンセプトアルバムです。
その中から、日本のゲームミュージックにも多大な影響を与えたとされるナンバーがこちらです。
80年代のゲームに親しんだリスナーなら、イントロのシンセで奏でられるアルペジオフレーズを聴けばすぐに解ると思います。
当時のゲームミュージック(特にコナミのアーケードゲーム)によく使われているフレーズがそのまま流れてくるからです。
初めて耳にしたときは心の底から興奮しました。
グラディウスシリーズの名曲[Burning Heart]や[A Shooting Star]、[Sand Storm]は何をルーツに作られたのか?
2拍3連のリズムに乗せて流れるように奏でるギターのツインリードを聴いていると、全ての謎が解明されます。
ただ、このパートはイントロのみ。
作品全体のストーリーに沿って曲が展開していき、街にたどり着いた情景を表す穏やかなミドルテンポへと移行します。
コミカルな音色で奏でられミステリアスなメロディは、まるで未知なる街を散策しているかのようです。
歌と歌詞がない分、想像力が掻き立てられます。
ギターソロに入るとまた展開が変わり、ハーフタイムシャッフルのムードあるリズムになります。
激しいピックスクラッチから始まるAndrew Latimerのプレイは、甘いトーンで語りかけるような色気のある名演です。
Peter Bardensのカラフルな伴奏と共に幻想的な世界へと誘います。
卓越したテクニックの持ち主が揃ったバンドながら、高度なアンサンブルは多用しません。
あくまでも楽曲を彩る手段として割り切るスタンスです。
このおかげでプログレッシブロック特有の取っ付き難さとは無縁で、幅広いファン層を取り込めました。
ゲームミュージックに魅了されたリスナーなら、一度は聞いておいた方がいい歴史的価値のある名曲です。
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