人間椅子 / りんごの泪 (1990)
1987年に青森県弘前市で結成されたハードロックバンド。
1990年に発表されたデビューアルバム[人間失格]の4曲目に収録されています。
骨太なハードロックサウンドに日本文学に影響された津軽訛りの歌詞を乗せたユニークなスタイルがファンから愛されているベテランバンドです。
中学生の頃から親交のあった和嶋慎治(Gt)と鈴木研一(Ba)を中心に[死ね死ね団]の名前で結成。
大学進学をきっかけに上京し、上館徳芳(Dr)と合流して本格的な活動を開始すると同時に現在のバンド名へと改名します。
1989年には当時人気だったコンテスト番組[三宅裕司のいかすバンド天国]に出演し、奇抜な衣装とは裏腹に[Black Sabbath]へのリスペクト心に溢れる卓越したパフォーマンスで審査員から大絶賛を浴びました。
それがきっかけで番組の持つインディーズレーベルよりミニアルバム[人間椅子]を発表。
翌年にはバンドブームに乗ってメルダックと契約を交わしてメジャーデビュー作となる本作を発表します。
その中から、ミニアルバムに収録されていた人気曲をリメイクしたナンバーがこちらです。
メインのギターリフは[Black Sabbath]の[Hole in The Sky]を彷彿とさせ、これを聴くだけでも強いリスペクトを感じます。
そこに津軽訛りを隠そうともしない日本語の歌詞を乗せるのですから、その斬新なアイデアで注目を浴びたのも頷けます。
引きずるようなシャッフルと文学的な日本語との組み合わせの心地よさに着眼したのは良いセンスです。
日本人がシャッフルのリズムを演奏すると、良くも悪くも祭囃子のような雰囲気が出てしまいます。
鈴木研一(Ba)は故郷で行われる弘前ねぷたまつりに並ならぬ情熱を持っており、シーズンには必ず帰省をすると聞きます。
きっと、DNA刻まれたリズムがこの曲を作り上げているのでしょう。
内容も日本人には親しみやすいものとなっています。
青森から汽車に乗せられて東京へ売られていく林檎達。
共に育った家族と離れ離れになる哀しみを代弁する物語は、古くから伝わる童話のように心の中へすんなりと入り込んできます。
驚くべきはサビのメロディライン。
サビでは昭和40年代に全国の子供達の間で流行したわらべ歌[百貫でぶの歌]をそのまんま流用しています。
日本文化に根付いたコンセプトとはいえ、ここまで徹底するなんて頭が下がります。
いくら雰囲気が日本的といえど、根底にあるのはブリティッシュハードロックです。
幽玄の世界へといざなう怪しいトーンのギターソロなんかは、[Black Sabbath]のTony Iommiになりきっています。
本気で心酔して研究をしないと、このフィーリングは出せないでしょう。
後に敬愛する[Ozzy Osbourne]に見初めらたのを起爆剤に、海外でも注目を浴びる出世を果たすバンド。
そんな彼らが踏み出す苦楽の道はこの名曲がスタートラインになったのではないでしょうか。
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