【曲紹介】人間椅子 / 暗い日曜日

人間椅子 / 暗い日曜日 (1995)

1987年に青森県弘前市で結成されたロックバンド。
1995年に発表された5枚目のアルバム[踊る一寸法師]の2曲目に収録されています。

骨太なハードロックに日本文学に影響された津軽訛りの歌詞を乗せたユニークなスタイルがファンから愛されているベテランバンドです。
1989年にコンテスト番組[三宅裕司のいかすバンド天国]への出演がきっかけでメジャーデビュー。
その後4枚のアルバムを発表しますが、所属していたメルダックより契約を解消されてインディーズでの活動を余儀なくされます。
アルバイトと掛け持ちをしながらの苦しい活動でしたが、正式メンバーに土屋巌(Dr)を迎えてレコーディングを開始。
当時のメンバーの精神状態が反映された重苦しいナンバーが揃い、インディーズレーベルのフライハイトから発売された唯一の作品が本作です。
その中から、特に人気の高いダークでメロディアスなナンバーがこちらです。

[Black Sabbath]に影響を受けた重苦しいサウンドと、初期の[井上陽水]を彷彿とさせる陰鬱なフォークソングのメロディラインとの掛け合わせはユニークです。
焦燥感にかられるギターリフや、起伏の少ない重苦しい雰囲気は過去の作品以上に強調されています。
特筆すべきは土屋巌(Dr)のズルズルと引きずるようなドラムのビート。
独特のリズムの揺れは曲調と非常にマッチしており、加入はは結果的に大成功だったと再認識させられました。

和嶋慎治(Vo/Gt)の絞り出すような絶叫からは、未来への希望を諦めた虚無感が感じられます。
当時は金銭的に困窮していたにも関わらずアルバイトが長続きせずに転々としていたとインタビューで話しており、そんな焦りがヴォーカルパフォーマンスに現れたのでしょうか。
無為に過ぎていく時間に追い立てられていることに気づいて絶望する内容は、あの[Pink Floyd]の名曲[Time]と似たものを感じます。

また、バンドの最大の武器である卓越した演奏技術を駆使したアンサンブル見事です。
特にギターソロ前のパートには魅了されます。
突如現れる複雑な変拍子。
ギターとベースがひたすらユニゾンを繰り返すのですが、ぼんやり聞いていると拍を見失いそうになるほど狂気的なものを感じます。
名盤[Red]を発表した時期の[King Crimson]からの影響でしょうか。
目を閉じれば果てしなく暗い宇宙区間が迫ってくるようです。

ちなみに、曲名の元ネタは1933年にハンガリーで発表された楽曲です。
ヨーロッパでは聴いた人間は自ら命を絶つという都市伝説が話題となり、イギリスのBBCでは放送禁止曲に指定されたほどです。
そんなタイトルを引用するなんて、楽曲の雰囲気をよく理解した素晴らしいセンスです。

ファンからの支持も厚く、ライブでもたびたび演奏される人気ナンバーとなりました。
翌年にはメジャーレーベルへ復帰し、OZZ Festへの出演を果たすまでに成長したバンドの再出発のスタートラインとなった名曲です。

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