スレイヤー / サウス・オブ・ヘヴン(1988)
1981年にアメリカのカリフォルニアで結成されたスラッシュメタルバンド。
1988年に発表された4枚目のアルバム[South Of Heaven]の1曲目に収録されています。
Big4と呼ばれるアメリカを代表するスラッシュメタルの中でも、特にスピードと過激さにこだわった作風でファンから帝王と呼ばれていたバンドです。
メジャーデビュー作となった前作の[Reign in Blood]は、当時としてはトップクラスのスピードとアグレッシブなサウンドでスラッシュメタルの金字塔とまで呼ばれる名盤となりました。
その立役者でもあるプロデューサーのRick Rubinが新レーベルのDef American Recordingsを立ち上げたため、バンドもそちらに移籍。
前作のような作品を作っても二番煎じになると判断し、攻撃性はそのままにテンポを落としたヘヴィで邪悪な作品を作り上げました。
メンバー自身はこのチャレンジが全面的に成功したとは感じていないようですが、前作を上回る売り上げでBillboardチャートでは57位を記録。
ライブでも好んで演奏される楽曲も数曲含まれております。
その中から、不穏なイントロがオープニングにうってつけのナンバーがこちらです。
引きずるようなスローテンポの焦燥感にかられるオープニングのリフが秀逸です。
これからどんな悪いことが起こるのかとハラハラさせられる邪悪さです。
そこに乗る呻くように歌うTom Arayaのパフォーマンスは、前作までとは明らかに毛色が違います。
怒りに任せて喚き散らすスタイルを変え、恨み言や呪詛にも似た全く新しい表現方法です。
賛否両論を巻き起こした変化ですが、この曲のテーマを表現するにはこれ以上なくハマっていると感じます。
楽曲にも大きなメリハリが生まれました。
スローなパート一辺倒ではなく、展開によってはしっかりとスピードアップします。
ですがあくまでも一般的なヘヴィメタルのビートのみで、2ビートの疾走パートはありません。
迫力満点のツインバスの連打もあるのですが、あくまでも楽曲に彩りを与える程度。
スローなパートを強調することでビートチェンジをした時のスピード感をより感じさせる、素晴らしいアレンジです。
以前と変わらない部分といえば、Jeff Hannemanのダイナミックなギターソロです。
アーミングを多用した定番とも言えるソロは、この曲でも大々的に取り入れられています。
このスタイルのギターソロは、テンポの速い遅いは関係ないのでしょう。
バックがどんな演奏をしていようと、自由奔放に暴れ回る彼の個性と言えるでしょう。
スラッシュメタルの帝王が放つ、スピードとは対極にある重厚なナンバー。
逆に帝王の威厳のようなものを見せつけることに成功した、歴史的名曲と言えるでしょう。
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