【曲紹介】Sly & The Family Stone / In Time

スライ・アンド・ザ・ファミリー・ストーン / イン・タイム (1973)

1966年にアメリカのサンフランシスコで結成されたファンクロックバンド。
1973年に発表された6枚目のアルバム[Fresh]の1曲目に収録されています。

アフリカ系とヨーロッパ系の人種・性別混合編成でヒットを連発した伝説的なバンドです。
60年代後半にはヒットを連発し、中でも4枚目の作品[Stand!]は300万枚を売り上げるR&Bのマスターピースとなりました。
そんな成功の裏ではSly Stone(Vo)の麻薬中毒がバンドを徐々に蝕んでいきます。
前作の[There’s a Riot Goin’ On]発表後、アンサンブルの中枢を担っていたLarry Graham(Ba)がSly Stoneから一方的な解雇を言い渡され、その状況に愛想が尽きたGreg Errico(Dr)もバンドを去ります。
これでバンドも崩壊かと思いきや、当時若手だったRustee Allen(Ba)とAndy Newmark(Dr)を新たなリズムセクションとして迎え入れ、どのバンドとも似ていない唯一無二の個性が多くの愛好家から絶大な支持を得る名盤を完成させました。
その中から、アルバムのトップを飾るダウナー系ナンバーがこちらです。

リズムボックスの無機質なビートと掴みどころのないアクセントのドラムが混ざり合った独特な浮遊感が全体を支配しています。
このトリップ感覚は一聴しただけではピンとこないリスナーも多くいると思いますが、非常に癖になる中毒性を持ち合わせています。
まず、イントロでの気の抜けた炭酸飲料のようなギターのトーンが衝撃的でした。
今にも消え入りそうな弱々しい音で単音を鳴らすたどたどしいプレイは、枯れた味わいでは済まされないインパクトです。

ですが、強靭なリズムセクションは実に活き活きしています。
粘っこく這い回るベースラインとフレーズの穴を埋めるかのようなドラムプレイは、2人で小声で会話をしているような阿吽の呼吸を感じます。
ベースフレーズがひとつ鳴ると、どれに応答するスネアのアクセント。
スタンダードなファンクのリズムセクションとは一線を画す名演です。

幾何学模様のように組み合わさるポリリズムも大きな特徴です。
コーラス、ブラスセクション、ギターのカッティング
必要最小限の音数で縦横無尽に飛んでくるアクセントの洪水はこれ以上なく綿密に構築された高度なアンサンブルです。

ここに絡むのが主役であるSly Stoneの粘付きのある変化自在の歌です。
時には囁くように、時には喘ぐようなシャウトを自由に使いこなして活き活きとしたパフォーマンスを聞かせてくれます。
重度の薬物中毒から立ち直り、アルバムジャケットが表す通りフレッシュな状態で臨んだのでしょう。

一聴しただけでは良さが充分には伝わらないかもしれません。。
ですが、何度もリピートするうちに狭い密室での秘め事のような怪しさに魅了されること請け合いです。
残念ながらバンドはその後崩壊して歴史の中だけで生き続ける存在となりますが、後期の代表曲として語り継がれる名曲です。

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