【曲紹介】Cradle Of Filth / Cruelty Brought Thee Orchids

クレイドル・オブ・フィルス / 鬼女の蘭 (1998)

1991年にイングランドで結成されたエクストリームメタルバンド。
1998年に発表された3枚目のアルバム[Cruelty And The Beast]の3曲目に収録されています。

吸血鬼をモチーフしたコスチュームに身を包み、ブラックメタル風のシンフォニックなサウンドで世界的な人気を誇るバンドです。
前作の[Dusk and Her Embrace]はデビューアルバムから格段な成長を遂げ、来日公演を行う等で徐々に注目を集めます。
勢いに乗ったバンドはElizabeth Báthory伯爵夫人の伝説を元に、初のコンセプトアルバムの制作に臨みます。
完成した本作は全英チャート48位にランクインしたばかりか世界各国で話題となり、バンドの代表作となりました。
その中から、プログレッシブな要素も含んだ人気曲がこちらです。

Hear Me Now
All Crimes Should Be Treasured
If They Bring Thee Pleasure Somehow

冒頭の語りだけで、楽曲の持つ世界へと引き込まれます。
中世ヨーロッパ(16世紀トランシルヴァニア公国=現ハンガリー)に実在したElizabeth Báthory伯爵夫人。
彼女の残忍非道な猟奇的殺人をテーマとしており、まるでホラー映画のサウンドトラックを聴いているようです。

このバンドの象徴となるDani Filthの歌唱も冴え渡っています。
低音のグロウルから超音波のようなシャウトまで使いこなす表現の幅の広さは驚異的で、初めて耳にした時は衝撃を受けました。
[Mearcyful Fate]の[King Diamond]と[Sabbat]の[Martin Walkyier]に影響を受けておりますが、双方の良い部分をバランスよく継承しています。

曲全体が哀しみに満ち溢れており、トレモロを多用したメロディアスなギターリフからは若くして命を奪われた少女達の叫びが聞こえて来ます。

発表当初はブラックメタルバンドとして紹介されていましたが、悪魔崇拝の思想は持っておりません。
メロディアスなギターは同郷の[Iron Maiden]やスウェーデンの[Dissection]からの影響が強く、ノルウェーの本来のブラックメタルとは関連がありません。

曲展開も起伏が激しくドラマチックで、シンフォニックな味付けもあってプログレッシブメタルの要素が感じられます。
特に中盤から後半にかけてのギターパートが消えてオーケストラパートがメインとなる展開は、あまりの美しさに聞き惚れました。

多くのファンから疑問視された玩具を叩いているようなドラムサウンドや不自然なほど小さいSarah Jezebel Devaのヴォーカルパートは、バンド側が意図していないものでした。
2019年にバンドが本来望んでいた形にリミックスされ、問題は無事に解決したようです。

どのジャンルとも違う、独自のエクストリームメタルとして発展していったバンドの初期の代表曲であり時代を超えた名曲です。

リミックスバージョンはこちら。

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