オジー・オズボーン / ソー・タイアード (1983)
1979年からソロ活動を開始したイングランド出身のシンガーソングライター。
1983年に発表された3枚目のアルバム[Bark at the Moon]の6曲目に収録されています。
[Black Sabbath]での活動とソロキャリアで世界的な知名度を誇るヘヴィメタルの帝王です。
相棒であるRandy Rhoadsがギターヒーローとして一世を風靡し、順風満帆な活動をしていた矢先に不幸な事件が起こります。
飛行機事故によってRandy Rhoadsが25歳の若さでこの世を去ってしまいました。
絶望の淵に落とされたOzzyは、周囲の助けもあって再発したアルコールやドラッグの問題から無事に回復。
後任として[Ratt]や[Rough Cutt]で活動していた日系人ギタリストのJake E. Leeを迎え入れ、よりキャッチーでストレートな楽曲を多く含む名盤を作り上げました。
その中から、ムード溢れるバラードがこちらです。
ピアノとシンセストリングスが主体のまるでムード歌謡のような曲調で、度肝を抜かれたリスナーも少なくないでしょう。
ハリウッド映画の挿入歌に使われても違和感はありません。
ギターサウンドはほとんど聞こえず伴奏に徹しており、ソロでようやく出番が来る程度。
ここまでソフトに徹したバラードは、Black Sabbath時代の[Changes]以来ではないでしょうか?
力のない声で「もう疲れたよ」と呟くように歌うOzzyの声は、驚くほど曲調にマッチしています。
Randy Rhoadsを失った悲しみからまだ立ち直れていない陰の部分を強烈に感じました。
この時期の彼にしか出せない名演です。
こういった楽曲で力を発揮するのが、名手Bob Daisleyのベースラインです。
歌のバックではボトムに徹しながらも、時折ハイポジションでメロディ楽器のように飛び回るプレイは地味ながらもセンスが光ります。
彼以外のプレイヤーが演奏したのでは、この絶妙なバランス感覚は出せなかったでしょう。
曲が最高潮に盛り上がるタイミングでようやく顔を出すのがJake E. Leeのギターソロです。
たった8小節しか出番がありませんが、持てる力を振り絞るかの如き渾身のプレイです。
この頃はまだ自分の納得できる音作りができなかったと語っていましたが、そんなことは微塵にも感じません。
全編に隙が全く無いほどLouis Clarkのストリングスアレンジが施されているために、ライブはなかなか再現が難しく演奏される機会は殆どありません。
ですが、この時代のトレンドを象徴するような隠れた名曲です。
コメント