マノウォー / ブラック・ウインド、ファイアー・アンド・スティール (1987)
1980年にアメリカのニューヨーク州で結成されたヘヴィメタルバンド。
1987年に発表された5枚目のアルバム[Fighting The World]の9曲目に収録されています。
Death to False Metalをコンセプトに、本物のヘヴィメタルを表現せんと活動しているベテランバンドです。
ファンタジーや北欧神話を題材としたスタイルがヨーロッパで人気を博し、1984年に行ったイギリス全土を回るツアーは多くのファンから熱狂的な歓迎を受けます。
その人気ぶりは[Mercyful Fate]の前座としてのツアーを開始したにも関わらず、最終的には彼らがヘッドライナーを務めるほどでした。
それに感嘆を受けたバンドは10/Virgin Recordsに移籍して発表した[Sigh Of Hammer]を引っ提げ、今度は2年にも渡る大規模なワールドツアーを行なって多くのファンを獲得します。
その中で活動方針を巡る対立によってレーベル契約を失うトラブルもありましたが、無事にAtlantic Recordsと契約を交わしてセルフプロデュースの本作を発表。
過去作では考えられないほど大衆的な楽曲が多く含まれており、フィンランドとスウェーデンで人気が爆発します。
その中から、過去作に収録されてもおかしくないパワー全開のスピードナンバーがこちらです。
冒頭で鳴り響く虫の羽音にも似た音色は、Joey DeMaio(Ba)による高速ピッキングです。
効果音でも鳴らしているのかと思いきや、Eric Adams(Vo)の歌が始まった瞬間に空気が一変。
6連符をひたすら鳴らしていたのだと気が付きました。
常識外れのスピードで鳴らされるサウンドを聴くと、全ての思考を排除して弦にひたすらピックを叩きつける姿が浮かんできます。
まさに己の筋肉だけで全てを捩じ伏せるプレイは、バンドのコンセプトにぴったり。
シンプルでわかりやすいナンバーが多く収録されているアルバムの中で、終始フルスピードで爆走する曲は特にインパクトを感じました。
ひたすらツインバスを連打して突き進むドラムがたまりません。
勇ましいメロディラインもキャッチーで覚えやすく作り込まれており、Eric Adams(Vo)の卓越した歌唱力も相まってライブでの合唱がとても映えます。
シンプルなメロディながらも、Eric Adams(Vo)が卓越した表現力のおかげで非常にドラマチックに聞こえます。
時折飛び出す金切り声を張り上げるシャウトは、まさにヘヴィメタルと言える切れ味の鋭さです。
この曲のハイライトは、ラストの30秒にも及ぶ超ロングトーンのシャウト。
一体どんな訓練をすればこんな芸当が出来るのかと、感嘆を受ける圧巻のパフォーマンスです。
多くのパワーメタルがデビューしていきましたが、[Lost Horizon]の[Daniel Heiman]をはじめ彼のスタイルを模倣としているシンガーは決して少なくありません。
歌唱スタイルのひとつを作り上げた第一人者と呼んでも差し支えないでしょう。
大衆に寄り添った作風になったとは言え、やはり掲げているコンセプトは揺るぎません。
「Manowarはあくまでもへヴィメタル・バンドであり断じてコマーシャル・バンドなのではない、それが気に入らない奴らは死ぬべきだ」
このスローガンがよく映える、ライブの定番ともなった名曲です。
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