オジー・オズボーン / 月に吠える (1983)
1979年からソロ活動を開始したイングランド出身のシンガーソングライター。
1983年に発表された3枚目のアルバム[Bark at the Moon]の1曲目に収録されています。
[Black Sabbath]とソロのキャリアで世界的な知名度を誇るヘヴィメタルの帝王です。
Jet Recordsと契約して発表した2枚のアルバムは、Randy Rhoads(Gt)のギターヒーローとも言えるクラシカルでメロディアスなプレイが世界中のファンを熱狂させました。
順風満帆なデビューかと思った矢先、1982年の3月にRandy Rhoads(Gt)が飛行機事故でこの世を去るという悲劇に見舞われます。
最愛の相棒を失ってしばらくはアルコールとドラッグに溺れて活動もままならない状況が続きますが、周囲の助けを借りながらライブアルバムを挟んで何とかニューアルバムへのレコーディングへと漕ぎ着けます。
後任ギタリストにはオーディションによって[Dokken]のGeorge Lynchに決まりかけるも、最終的には[Ratt]や[Rough Cutt]で活動していたJake E. Leeが加入します。
苦難の末に完成した本作は、過去作に比べてキャッチーでよりメタリックな楽曲が多く含まれた名盤となりました。
その中から、アルバムのオープニングを飾るスピード感溢れる人気ナンバーがこちらです。
冒頭のギラギラとした音質で刻まれるギターリフを聴けば、前任者と全く違うタイプのギタリストが加入したのだとわかります。
クラシックからの影響が強いRandy Rhoads(Gt)のプレイがヨーロピアンな雰囲気を醸し出していたのに対し、Jake E. Lee(Gt)は当時のアメリカのトレンドにより近く煌びやかなものです。
フラッシーなフレーズの数々は、どれも華やかで強烈なインパクトを放っています。
雰囲気の変化にはドラマーの交代も大きく影響をしています。
金銭面のトラブルで解雇された前任者のLee Kerslake(Dr)古巣の[Uriah Heep]へと復帰した為、後任には[Pat Travers Band]や[Gary Moore]のバックで活躍をしていたTommy Aldridge(Dr)が選ばれました。
豪快なリズムで曲に彩りを与える前任者に対し、正確なタイムキープで派手なギタープレイを支える彼の加入によってアリーナロックとも称されるよりスケールの大きいサウンドへと変化を遂げています。
ですが、この曲の影の主役は間違いなくBob Daisley(Ba)でしょう。
彼もLee Kerslake(Dr)と共に金銭面のトラブルで解雇されて[Uriah Heep]に加入したのですが、後にトラブルが解消されて復帰を果たしました。
これまでの作品では作詞と作曲で全ての曲に関わっていましたが、本作ではプロデューサーの1人にまで名を連ねています。
彼の持つ音楽的な素養がバンドにフィットしており、その才能が買われたことは想像に難くありません。
独特なスタッカート気味のベースラインはタイトなドラムビートと驚くほど相性が良く、アンサンブルの中心となってリズムをグイグイと引っ張ります。
更には、ギタープレイの邪魔にならないタイミングでさりげなく繰り出されるメロディアスなフレーズは否が応にも耳に残ります。
まさにBass(基盤)となる理想的なプレイと言えるでしょう。
バンドの中心人物だったRandy Rhoads(Gt)を失った不幸を、新旧のメンバーが一丸となって乗り越えました。
まさに、80年代初期のヘヴィメタルを代表する名曲です。
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