ルナシー / デジャヴ (1992)
1989年に神奈川県秦野市で結成されたロックバンド。
1992年に発表された2枚目のアルバム[IMAGE]の2曲目に収録されています。
派手なメイクと耽美な世界観で、ヴィジュアル系と呼ばれるスタイルを浸透させた代表的なバンドです。
1990年にExtasy Recordsから発表したデビューアルバムは瞬く間に話題となり、メジャーデビュー前にも関わらずホールツアーを行うバンドにまで成長を遂げます。
その圧倒的集客力が遂にメジャーレーベルの目に留まり、1991年にMCAビクターと契約を交わします。
予算と時間に余裕のある環境を提供され、かつてないほど細部まで拘ったレコーディングを開始。
完成したメジャーデビューアルバムは、オリコンチャートで9位に輝きました。
後にライブでの定番となる曲を多数含む名盤から、初期の名曲として非常に人気の高いスピードナンバーがこちらです。
オープニングの[CALL FOR LOVE]が終わると転がり落ちるようなタム回しのフィルインがリスナーに強烈な印象を残します。
そこに続く複雑に絡み合った2本のギターがトリッキーなリズムで交錯するイントロから、一気にハイテンポで疾走する展開は何度聞いてもゾクゾクさせられます。
アレンジは複雑ながらも、歌のメロディラインは極めてストレート。
サビでは日本語の歌詞が映える昭和歌謡にも通じるものがあり、俳句や短歌を嗜むDNAを持った日本人ならではの侘び寂びを感じさせるものです。
それを高らかに歌い上げるRYUICHI(Vo)のパフォーマンスは見事の一言。
二重人格のように狂気的なAメロとクリアなハイトーンでストレートに歌うサビのコントラストが素晴らしく、アマチュア時代のハードコアなスタイルを経て迷いが無くなったように聴こえます。
SUGIZO(Gt)とINORAN(Gt)の奏でる2本のギターサウンドは幾重にも絡み合い、まるでオーケストラのようです。
ユニゾンを一切排除し、綿密な役割分担のもとに構築された名演です。
前のめりなスピード感を演出する真矢(Dr)のドラムも魅力的です。
エフェクトシンバルやハイピッチのタムを叩き分ける手数の多いカラフルなプレイは、まるでリード楽器のよう。
師匠であるそうる透からの影響が色濃く出たプレイだと感じました。
これだけ彩り豊かなアンサンブルの根底を支えているのがJ(Ba)です。
4分音符を基調としたフレーズを中心に、リズムの芯をグイグイを押し出すようなプレイは曲の体感速度をより一層押し上げています。
複雑なアレンジの中で一際光るシンプルなプレイが、彼の個性をより際立たせているように感じられました。
若くしてデビューを果たした初々しさもありますが、この年齢でここまで自分達のこだわりを具現化できたのは驚異的です。
メンバー全員のお気に入りとのことで、ライブでのサウンドチェックで頻繁に演奏するようです。
後続のバンド達に与えた影響も計り知れず、この曲に影響を受けたであろうナンバーも数えきれないほど存在しています。
そういった歴史的観点からも、ヴィジュアル系の雛形を作ったと言っても差し支えない名曲です。
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