キャンドルマス / ザ・ダイイング・イリュージョン (1992)
1984年にスウェーデンで結成されたドゥームメタルバンド。
1992年に発表された5枚目のアルバム[Chapter VI]の1曲目に収録されています。
[Black Sabbath]から影響を受けた重く陰鬱なサウンドにドラマチックな展開を盛り込んだ楽曲で、ジャンルの先駆者として絶大な人気を誇るバンドです。
80年代には4枚のセンセーショナルな名盤を連発し、本刻スウェーデンの音楽チャートにも顔を出してその存在感を示していました。
しかし、1991年にシンガーのMessiah Marcolinが他メンバーとの意見の相違によって脱退してしまいます。
その後任には元[Talk Of Town]のThomas Vikström選ばれ、ラインナップを新たに発表されたニューアルバムは話題性もあって過去最高の売り上げを記録しました。
その中から、アルバムのトップを飾るダークなナンバーがこちらです。
スローで引きずるような楽曲が大半のこのバンドにおいて、アップテンポの楽曲は貴重です。
ちょうど同時期に活動していたTony Martin加入後の[Black Sabbath]に雰囲気が近いかもしれません。
どんよりした重さよりもゴシックな要素を全面に押し出しており、邪悪な雰囲気は満載ながらもオーソドックスなヘヴィメタルとなりました。
新加入のThomas Vikström(Vo)は申し分ない実力者でしたが、元々はハードポップバンドの[Talk Of The Town]に在籍していたシンガー。
ヘヴィメタルで音源を残すのはこのバンドが初めてなのですが、驚くほど違和感がありません。
前任者のMessiah Marcolinは[Mercyful Fate]の[King Diamond]から絶大な影響を受け、広い声域とドラマチックな歌唱でファンから絶大な支持を得ました。
対するThomas Vikströmは父親である著名な声楽家のSven Erik Vikströmから手ほどきを受け、プロのオペラ歌手としても活躍している逸材。
圧倒的な声域の広さは、後任は彼意外考えられないとまで言わしめる堂々とした存在感を示しています。
シンガーが変わったことで、シンフォニックな味付けも活かされています。
シンセの寒々しいフレーズは非常に良いアクセントとなっており、硬質な音作りと共に過去作以上に洗練された印象です。
中間部分では大幅なリズムチェンジを有効に使い、時にはパワーメタルのように疾走するリズムを盛り込むなど意欲的なアレンジです。
初期の4枚や2000年以降の作品がファンから熱烈な支持を得ているバンドであるためにその影に隠れがちですが、シンフォニックでダークヘヴィメタルが好きなリスナーには十分にアピールできるのではないでしょうか?
この先、Thomas Vikströmのヘヴィメタルシンガーとしてのスタートラインともなった名曲です。
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