【曲紹介】Cryptopsy / Phobophile

クリプトプシー / フォボファイル (1996)

1988年にカナダで結成されたデスメタルバンド。
1996年に発表された2枚目のアルバム[None So Vile]の6曲目に収録されています。

数あるテクニカルデスメタルの中でトップクラスの知名度を誇るベテランバンドです。
自主制作で発表したデビューアルバム[Blasphemy Made Flesh]がマニアの間で話題を呼び、オランダのDispleased Recordsの支援を得てリリースツアーを成功させます。
活動が軌道に乗ったバンドは、[Arch Enemy]や[In Flames]も在籍していたスウェーデンのWrong Again Recordsと契約をしてレコーディングを開始します。
完成した本作は、多くのファンがバンドの最高傑作と評する名盤となりました。
その中から、カオスな音像が癖になるブルータルなナンバーがこちらです。

古いレコードから聞こえてくるような美しいピアノのソロで始まる展開が秀逸です。
ソロが終わると同時にギターのフィードバックが重なり、ドロドロと怪しいベースソロへと移行。
緊張感が極限まで高まったと同時に、凄まじい咆哮と共に一気にバンドがインします。
まるでホラー映画で突然モンスターが飛び出してきたような衝撃でした。

高速のビートとブルータルなギターリフの織りなすオーソドックなデスメタルなのですが、特筆すべきは嵐が吹き荒れるような混沌とした雰囲気です。
テンポチェンジやリズムチェンジを複雑に絡ませ、音の洪水を演出しています。
そこに乗るLord Wormの人間離れした咆哮は、非常に良いアクセントとなっています。
歌詞を聞き取ることすら困難なほど歪んだグロウルは、[Cannibal Corpse]のChris Barnesと並んで究極のデスヴォイスとファン達から親しまれています。

こういった音を詰め込むタイプの楽曲は一本調子になるかアンサンブルが崩壊する恐れがあるのですが、そこを絶妙なバランスで整合性を持たせています。
押しと引きのメリハリを計算し、エンジン全開で走っていたかと思えば急ブレーキをかけてリスナーのテンションを揺さぶります。

その中心にいるのが、凄まじい自己主張でバンドを引っ張るFlo Mounierの存在です。
普段は医者として働きながらプロのジャズドラマーとして活動をしていますが、このバンドでは手数足数の多さとスピード感に溢れる嵐のドラミングを披露しています。
また、機械のように正確というわけではなく人間的な心地よい揺れを感じさせるリズムを操ります。
凄まじいスピードのブラストビートをまるで言葉を発するように流暢に奏でるドラマーは珍しいのではないでしょうか。

テクニカルデスメタルは、この曲で一度頂点を極めました。
彼らに影響を受けたバンド達が、ニュースクールデスメタルとして新たなシーンを切り開いていきます。
そう言った意味でも歴史に残る名曲です。

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