【曲紹介】Keel / Speed Demon

キール / スピード・ディーモン (1984)

1984年にロサンゼルスで結成されたヘヴィメタルバンド。
同年に発表されたデビューアルバム[Lay Down The Law]の3曲目に収録されています。

テネシー州出身のシンガー[Ron Keel]率いるバンドです。
彼がリーダーとして在籍していた[Steeler]はスウェーデンから海を越えてやってきた[Yngwie Malmsteen](Gt)の活躍で話題となるも、相次ぐトラブルとメンバーチェンジに見舞われてバンドが崩壊。
再起を図るために、バンド解散時のメンバーだったBobby Marks()と共に自らの名前を冠したバンドを立ち上げました。
[Steeler]時代からの付き合いであるShrapnel Recordsからリリースされた本作は、アンダーグラウンドな雰囲気の漂う毒々しいメタルサウンドが地元を中心に話題となります。
その中から彼らの代表曲と言えるアップテンポで攻撃的なナンバーがこちらです。

Marc Ferrariの弾くスピード感溢れるギターリフは、壊れかけのエンジンを載せた車が黒い煙を吐きながら猛スピードで走り抜けるような危険な雰囲気が満載です。
そこに切り込んでくるのが、極端に前のめりなリズムでテンションの高いBobby Marksのドラミング。
一歩間違えばアンサンブルが崩壊しかねない粗々しいプレイなのですが、レーベルの求めている暴力的で初期衝動溢れるサウンドを体現するにはこれ以上なく理想的です。
メジャーレーベルと契約した良くも悪くもお行儀の良いプレイとは一線を画しています。

シンガーのRon Keelも、ここでは水を得た魚のようです。
[Steeler]を率いて野望を持ってナッシュビルからロサンゼルスに移住するも、メンバー間のトラブルに翻弄されてロクな結果も出せないままバンドが崩壊してしまった鬱憤が溜まっていたと思います。
それを晴らすかのようなF1カーのようなシャウトは、自分が主役であるバンドを結成できた喜びに満ち溢れています。

次作の[The Right to Rock]では[Kiss]のGene Simmonsがプロデュースを手がけてリメイクされましたが、音質も演奏も拙いこちらのバージョンの方がギラギラした勢いが感じられます。
当時のメジャーレーベルが求めていた華やかなパーティーロック路線とは対極に位置する、ストリートで喧嘩に明け暮れるチンピラのようなサウンドです。

ロサンゼルスのヘヴィメタルシーンが音楽シーンを制圧する前夜。
地下の薄暗いライブハウスで鎬を削っていた顔役とも言える時代の、ナイフのような切れ味の鋭い名曲です。

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