【曲紹介】Judas Priest / Painkiller

ジューダス・プリースト / ペインキラー (1990)

1969年にイングランドで結成されたヘヴィメタルバンド。
1990年に発表された12枚目のアルバム[Painkiller]の1曲目に収録されています。

ヘヴィメタルの頂点に立ち、メタルゴッドと呼ばれるようになったシーンを象徴するバンドです。
80年代に快進撃を続け、時代の流行を取り入れながらも変化自在のサウンドと精力的なツアーで世界中で多くのファンを獲得することに成功しました。
しかし、時代の流れと共にスラッシュメタルやデスメタルといった更に過激なサウンドを求めるフォロワー達が作ったサブジャンルが盛況し始めます。
メタルゴッドの意地を見せるべく、攻撃的な面を特に強調した作風に舵を切りました。
それに伴い、音楽のスタイルの相違からメンバーと衝突したDave Holland(Dr)が脱退。
オーディションの末に選ばれたのは[Racer X]で活動をしていたアメリカ人のScott Travis(Dr)でした。
結成されてから20年以上のベテランバンドながら攻撃性を極限まで高めた若々しいサウンドは、ファンの間から第2のデビュー作とまで呼ばれるほど大歓迎をもって迎えられました。
その中から、アルバムのオープニングを飾る衝撃のタイトルトラックがこちらです。

新加入のScott Travisによる挨拶代わりとも言える強烈なドラムソロからスタート。
ツインバスの高速連打を絡めた音数の非常に多い派手なプレイからは、ベテランの地位にあぐらをかくのではなく常に攻めの姿勢を崩さないギラギラした野心が感じられます。

ギターリフも、過去作とは比較にならないほど攻撃的。
切れ味の鋭い単音リフや6連譜での高速の刻み等、スラッシュメタルからの影響が感じられる要素が多く顔を出します。
ガリガリと鉄を削るようなギターサウンドは、プロデューサーを務めたChris Tsangaridesのおかげです。
彼の初めての仕事は19歳の頃、セカンドアルバムの[Sad Wings of Destiny]のレコーディング現場でのアシスタント・エンジニアでした。
その後、名プロデューサーと呼ばれるほどに成長を遂げてから初めて仕事をしたバンドと再会するなんてドラマチックな展開です。
お互いに駆け出しだった頃を思い出しながら情熱的に制作に取り組んだであろう状況がサウンドにも見事に現れています。

驚くべきは、Rob Halfordの鬼気迫る歌唱です。
低音と高音を使い分ける声域の広い歌唱スタイルがこれまでの魅力でしたが、この曲では全てにおいて凄まじいハイトーンだけで構成されています。
スピーカー越しに牙を剥く野獣のような迫力からは、これまでのキャリアを一区切りとして新たなスタートをを切る覚悟が感じられます。
当時、アメリカのシアトルではグランジ・オルタナティブロックが新たなムーブメントを迎えつつありました。
これらのジャンルが音楽シーンの主流になりつつある状況を目の当たりにし、大きな刺激を受けたのでしょう。

激しさ一辺倒のスラッシュメタルやデスメタルとは明確な差別化ができており、激しさの中にも80年代初頭から続くブリティッシュメタルの伝統をバランス良く盛り込めています。
結果的に、90年代の新しい正統派ヘヴィメタルのスタイルとして新たな地位を築くことに成功しました。
まさに、ジャンルを代表するスタンダードナンバーとなった歴史的名曲です。

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