テラ・ノヴァ / ブレイク・アウェイ (1997)
1992年にオランダで結成されたハードロックバンド。
1997年に発表された2枚目のアルバム[Break Away]の1曲目に収録されています。
80年代のアメリカのヒットチャートを賑わせていた爽快で煌びやかなハードロックサウンドを蘇らせた、俗に言うメロディアスハードロックの王道を行くサウンドが売りのバンドです。
デビューアルバムは本国ではセールス面で失敗終わりましたが、収録曲を削って曲順を並べ替えた日本盤が話題になったことにより、Victor Entertainmentと専属契約を結ぶことに成功。
こうして日本のみで発売された本作は、いくらか垢抜けて力みの抜けたよりメロディアスな名作となりました。
その中から、アルバムのオープニングを飾るに相応しい底抜けに明るいナンバーがこちらです。
照りつける太陽の下を水上バイクで水飛沫を上げながら走り抜ける光景を連想させる清涼感抜群のシンセがこの曲の方向性を決定づけています。
一片の曇りもなく清潔で健康的なイメージは、聴いているだけで明るく前向きな気分になります。
気分が高揚する要因としては、地味な部分ではありますがAメロでのギターの細かいカッティングも大きく関係しています。
ドラムは軽快なビートとシンプルなリズムパターンでボトムを支えているのですが、その上に16分音符を基調としたフレーズが乗るために、慌ただしさを感じさせないような疾走感が出ています。
これによって、明確に示された道筋をサビに向かって一気に速度を上げて駆け抜けるイメージが連想されます。
駆け抜けた先でのサビAでは開放感溢れるコーラスワークに目の前が明るくなりますし、サビBで漂う僅かな哀愁は困難を乗り越えて明るい未来へと突き進むカタルシスを見事に表現しています。
この雰囲気を演出するのに大きな貢献をしているのが、Fled Hendrixの持つハスキーでソウルフルな歌声です。
癖があって好き嫌いも分かれるタイプの声ですが、内なる感情を解き放つように情熱的に歌います。
演出過剰気味なスタイルが受け入れられるリスナーならば、間違いなく気に入るでしょう。
正統派90年代に入ってからはアメリカンロックに代表されるバブリーで明るいイメージの音楽が隅に追いやられ、入れ替わりにダウナーで陰鬱なオルナタティブロックやヘヴィな部分を強調したエクストリームミュージックが活性化する中で、完全に時代に逆行したことを堂々とやってくれる姿勢は好感度が高いです。
メロディアスハードロックにおいて、陽の部分を極限まで高めた名曲です。
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