ヴィクトリアス / スーパー・ソニック・サムライ (2020)
2004年にドイツで結成されたメロディックパワーメタルバンド。
2020年に発表された5枚目のアルバム[Space Ninjas From Hell]の3曲目に収録されています。
伝統的なメロディックメタルを愚直なまでに貫く解りやすいサウンドが魅力のバンドです。
結成以来、地道なライブ活動によって着実にファンを増やしていきますが、飛び抜けた個性は演出できていませんでした。
しかし2018年にリリースしたミニアルバム[Dinosaur Warfare – Legend of the Power Saurus]は、恐竜とエイリアンの戦いを描くSFファンタジーに方向転換しました。
あまりに強烈なジャケットとコンセプトが見事に受けてバンドの人気は急上昇。
大手レーベルであるNapalm Recordsへの移籍を果たし、次のコンセプトアルバムの制作に着手します。
本作は数百年前の日本をモデルにしたオリジナルのSFファンタジー。
何もかもが事実と異なるコミカルで壮大な作品に仕上がりました。
その中から、超音速で悪と戦う侍をテーマにしたキャッチーなナンバーがこちらです。
日本人の感性からすると、直視することすら憚られるインパクト絶大なタイトルです。
スーパーソニック(超音速の)サムライ(侍)です。
[Sex Machineguns]のデビューアルバムにもふざけたタイトルの[High Speed SAMURAI]が収録されていますが、こちらは次元が違います。
ドイツ人が何をもって超音速の侍を表現しようとしているのか、その謎を解明してみましょう。
スーパーソニックサムライは、敵を倒すためにハイテク技術を駆使して作られたサイバースティール製のソルジャー。
その動きは目にも止まらぬスピードで、まるで夜空に輝くコズミックファイヤー如き。
ニュートリノパワーが身体中に満ちて、怒りに満ちた瞳には炎がメラメラと燃え上がる。
ジェットパックの力で舞い上がり、レーザー刀を天高く振り上げている。
以上が概要です。
まるで中学生が考えたような内容ですが、とても親近感が湧きます。
解りやすいメロディックメタルには、このくらいインパクトのある内容の方がいいのかもしれません。
ですが、楽曲はキャッチーそのもの。
高速ビートを基調にシンセやツインリードのハーモニーを余すことなく取り入れた、メロディックパワーメタルの王道です。
前作までと違ってアレンジが大袈裟までにわかりやすくなっており、まるでヒーロー戦隊の主題歌を聴いているかのよう。
シンガーの声もハイトーンですがマイルドで、ビブラートをかけない歌い方はヒロイックなメロディとの相性も抜群です。
タイトルを連呼するサビや、そのバックにカウンターメロディとして入るフレーズなんかは音楽を普段聴かない子供でも理解できます。
現代的な要素も取り入れており、イントロのブラストビートは[Dragonforce]でおなじみのアレンジです。
音作りもメタルコアでも通用するエッジの効いたもので、メロディックメタルによくある古臭いサウンドは皆無。
現代に生きるバンドとしてのアイデンティティも持ち合わせています。
ヘヴィメタルの持つシリアスな部分を好むリスナーは顔を顰めるスタイルの変化です。
ですが、エンターテイメントを求めるリスナーにとっては理想系とも言えるのではないでしょうか。
新しい時代のメロディックパワーメタルを象徴する名曲です、
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