【曲紹介】Mayhem / Buried By Time And Dust

メイヘム / ベリード・バイ・タイム・アンド・ダスト (1994)

1984年にノルウェーで結成されたブラックメタルバンド。
1994年に発表された1枚目のアルバム[De Mysteriis Dom Sathanas]の7曲目に収録されています。

音楽ジャンルとしてのブラックメタルのスタイルを作り上げたパイオニアです。
ローカルバンドとして結成され、メンバーチェンジを繰り返しながらデモ音源やミニアルバムのリリースを繰り返してアンダーグラウンドな活動を続けます。
しかし、1991年にアルバムのレコーディングを開始した矢先にDead(Vo)が猟銃で自らの頭を撃ち抜いてこの世を去ってしまうアクシデントが発生。
この事件で大きなショックを受けたNecrobutcher(Ba)もバンドを去ってしまいました。
残されたEuronymous(Gt)とHellhammer(Dr)は、急遽ハンガリーの[Tormentor]で活動していたAttila Csihar(Vo)と[Burzum]のCount Grishnackh(Ba)に演奏のサポートを要請。
レコーディングも無事に完了し、リリースの準備をしていた1993年初頭にバンドを更なる悲劇が襲います。
なんとリーダーのEuronymous(Gt)が人間関係のトラブルでCount Grishnackh(Ba)によって殺害されてしまい、バンドは解散。
完成していた作品は、Euronymous(Gt)が経営していたDeathlike Silence Productionsより彼の追悼盤として発売されました。
その内容は悍ましいほどに邪悪で禍々しい雰囲気に包まれており、ブラックメタル史上最高の作品と称するファンも多くいる伝説的な名盤となりました、
その中から最も短く、曲展開もストレートなナンバーがこちらです。

アルバムに収録されている曲の殆どが5分から6分という長さの中、この曲だけは3分30秒と短くラストまでフルスピードで突っ走ります。
リズムチェンジや展開の変化が殆ど無いすっきりとしなアレンジで、展開が激しく入れ替わる楽曲の多い作品の中でも異色です。

屋台骨となっているのが、Hellhammer(Dr)による嵐のようなブラストビートです。
凄まじいスピードで繰り出されるキックとスネアの連打を聴いていると、地獄の業火で焼かれて悶え苦しむ聖者の姿が浮かんできます。
機械のように正確なリズムとは違う人間的な揺らぎが魅力的で、楽曲の持つ暴虐性を更に高めています。

荒れ狂うリズムに乗って棘のあるチリチリした音質でかき鳴らされるギターリフは、まるで吹き荒ぶブリザードのよう。
[Black Sabbath]が始めた不安を煽る邪悪な音階で構成されたギターリフ。
延々と繰り返される不協和音からは激しい憎悪に加え、まるで血が通っていないような無機質な恐ろしさも感じられます。

この演出に一役買っているのがAttila(Vo)による非常に個性的な歌唱法です。
[Venom]や[Bathory]に代表される濁声での吐き捨てスタイルを発展させ、まるで呪詛を唱えているかのような呻き声は多くのリスナーに衝撃を与えました。
驚くほど曲の世界観と合致しており、サポートメンバーとは到底思えないほど強烈な存在感を放っています。
後にバンドが再結成した際には正式メンバーとして迎えられたのも頷けます。

商業的に成功したブラックメタルバンド達とは音楽性が大きく異なるため、軽い気持ちで入門用として聴いてみる作品ではないかもしれません。
ですが、ブラックメタルの歴史や思想について理解した上で触れてみるとその世界観に引き込まれること間違いなしです。
まさにブラックメタルの創世記における究極形であり、歴史に名を刻む名盤の一部を構成する名曲です。

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