【曲紹介】Mercyful Fate / A Corpse Without Soul

マーシフル・フェイト / ア・コープス・ウィズアウト・ソウル (1982)

1981年にデンマークで結成されたヘヴィメタルバンド。
1982年にリリースされた最初のEP[Mercyful Fate]の1曲目に収録されています。

[King Diamond]の強烈なファルセットボイスとオカルトを扱ったサタニックな歌詞によって、多くのフォロワーを生み出した伝説のバンドです。
コペンハーゲンの[Brats]に在籍していた[King Diamond](Vo)とHank Shermann(Gt)は、POPな方向性を強要するレーベルと対立をしてバンドを脱退。
よりメタリックな音楽性を追求すべくメンバーを集めます。
何度かのラインナップの変更を挟みながらもデモテープを作成し、最終的にはTimi Hansen(Ba)とKim Ruzz(Dr)と解散した[Brats]から旧知のMichael Denner(Gt)が合流してラインナップが揃います。
オランダに渡って振興インディーズレーベルのRave-On Recordsと契約してレコーディングを開始。
2日間かけて録音した4曲をEPとしてリリースしたのが本作です。
その中から、トップを飾るプログレッシブでヘヴィなナンバーがこちらです。

音数をこれでもかと詰め込んだヒステリックなギターソロで度肝を抜かれます。
まるで地獄の底に叩き落とされる断末魔を表現しているかのような音色は、とにかく強烈。
イントロだけでリスナーの心をガッチリと掴む歴史的名演と言えるでしょう。

それに反して、ギターリフは恐ろしくキャッチーです。
邪悪な雰囲気はほとんどなく、ブリティッシュメタルの王道を感じさせる3連のリズムが実にご機嫌。
イントロから強烈な印象を与えて来ますが、この曲の魅力はこんなものではありません。

[King Diamond]の形容し難いファルセットボイスを当時リアルタイムで聴いたリスナーは、一体どんな反応をしたでしょうか?
“Listen!!”(よく聴け!!)と4小節をたっぷり使ってのシャウトは凄まじく、1982年当時はこんな特異な声を発するシンガーは存在しませんでした。
まるで二重人格者のように高音と中低音をジェットコースターのように行ったり来たりするスタイルは、歌と言うよりも物語を伝えるストーリーテラーさながらです。

また、唐突に曲展開が変化するプログレッシブロックのアプローチも個性的です。
[Iron Maiden]もリズムチェンジで複雑な展開を演出していましたが、1曲で4回以上展開が変化するヘヴィメタルは当時としては斬新です。
7分と長めの曲ではありますが、この展開のおかげで一本調子にならず組曲を聴いている感覚で楽しめます。

スローパートを組曲のように織り交ぜるアレンジは多くのバンドに影響を与え、エクストリームメタルの誕生に大きく貢献しました。
[Metallica]はLars Ulrich(Dr)が彼らと同郷であり心酔していたことからライブで頻繁にレパートリーに加えていたことで有名です。
[Slayer]も[Hell Awaits]で複雑な曲展開を取り入れたのは彼らの影響であると公言しています。
[Megadeth]の初期の音楽性などは影響を受けていないと言われても絶対に信じられません。

その後、バンドは分裂したり再結成したりで目まぐるしい変化を遂げていきます。
後の作品ほどの圧倒的知名度はありませんが、歴史の出発点となる記念碑とも言える名曲です。

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