ゲイリー・ムーア / フォーリング・イン・ラヴ・ウィズ・ユー (1982)
1979年からソロ活動を開始した北アイルランド出身のギタリスト。
1982年に発表された2枚目のソロアルバム[Corridors of Power]の5曲目に収録されています。
ハードロック、フュージョン、ブルース等ジャンルを超えて活躍した名プレイヤーです。
[Thin Lizzy]と[Colosseum II]に籍を置いた状態でソロデビューし、両バンド脱退後はJet Recordと契約を交わして自身のバンド[G-Force]を結成します。
しかしアルバムを1枚残してバンドは空中分解してしまい、ソロ活動に戻ります。
1981年に[Dirty Fingers]をレコーディングしますが、無断で[Cozy Powell]のソロアルバムに参加したことでレーベルとの関係が悪化してソロ活動が不可能な状況に追い込まれてしまいます。
レコーディングをしたアルバムもお蔵入りとなってしまいますが、新たに手を差し伸べたVirgin Recordsへと移籍。
多くの豪華ゲストミュージシャンを起用してリリースした本作は、Billboardチャートで149位にランクインを果たしました。
その中から、ロマンティックなメロディがたまらないラブバラードがこちらです。
冒頭のたった4音でリスナーを一気に引き込む魔法のようなギターソロは、まさに一撃必殺と呼べるでしょう。
胸が締め付けられる感情をたっぷり含んだチョーキングとビブラートは、数あるロックのバラードソングの中でも稀に見る名演です。
このイントをだけで何度もリピートしたくなる凄まじい破壊力です。
Gary Mooreの声域は狭いながらも声を絞り出すように歌うスタイルは、メロディラインとの相性もバッチリ。
良い意味での余裕の無さが楽曲の持つ哀愁を何倍にも増幅させてくれています。
テクニカルなシンガーが余裕たっぷりに歌うとこの雰囲気が全く出ませんので、つくづく音楽表現の面白さを再認識できます。
浮遊感のあるコード進行と音の隙間で心地よさを演出するリズムアレンジも見事です。
ハードロックらしい荒々しいプレイは皆無であり、どこまでもソフト且つ情熱的に感情を込めて音を刻んでいるのがよくわかります。
美しい夜景が似合う包み込むような優しさに溢れたムードが全体を支配しています。
ゲストミュージシャンも非常に豪華[Lone Star]や[Uriah Heep]での活動で知られるJohn Sloman(Baking Vocal)
[Colosseum II]で活動を共にし、[Rainbow]や[Ozzy Osbourne]での活躍が知られるDon Airey(Key)
[Jeff Beck]や[Phil Phllins]から絶大な信頼を寄せられていたMo Foster(Ba)
そして、[Deep Purple]や[Whitesnake]での活躍で著名なIan Paice(Dr)
まさに向かう所敵なしとも言える布陣でのレコーディングは、一切の隙がない完璧なラブバラードへの仕上がりとなりました。
スタイリッシュになったシングルヴァージョンやギターインストのヴァージョンもありますが、生々しいバンドサウンドのアルバムバージョンが最も好みです。
多くの名曲の陰に隠れて取り上げられる機会はそこまで多くありませんが、アルバムの流れに乗ると一際輝くナンバーです。
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