【曲紹介】Emperor / I Am the Black Wizards

エンペラー / 我は黒魔術師なり(1994)

1991年にノルウェーで結成されたブラックメタルバンド。
1994年に発表された1枚目のアルバム[In the Nightside Eclipse]の8曲目に収録されています。

ノルウェーのブラックメタルシーンの中心的バンドであり、ブラックメタルにシンフォニックなアレンジを取り入れたパイオニアです。
10代中盤の若者が集まって結成され、デモ音源を発表するなりアンダーグラウンドで一目置かれる存在となります。
イギリスのCandlelightと契約をしてセリフタイトルのEPを発表後、[Mayhem]のEuronymousが主催するDeathlike Silence Productionsへと移籍。
デビューアルバムのレコーディングを開始しますが、レーベルオーナーのEuronymousが[Burzum]のCount Grishnackhに殺害されてしまいレーベルも機能を停止。
更にはレコーディング終了後にFaust(Dr)が1992年に行った殺人の罪で、Samoth(Gt)が教会に放火を行った罪で投獄されてしまいます。
残されたIhsahn(Vo/Key)とTchort(Ba)はバンドを存続させるべく古巣のCandlelightと再契約。
こうして紆余曲折の末に発表された本作は、シンフォニックブラックメタルのマスターピースとして後世に語り継がれる名盤となりました。
その中から、バンドの代表曲として多くのファンから愛されているスピードナンバーがこちらです。

とにかく邪悪で、且つメロディックなメインテーマとも言えるギターリフがたまりません。
凍えるほど寒々しいムードが全編に渡って漂っており、深くリバーブのかかったお世辞にも良いとは言えない音質と相まって曲の持つ雰囲気に引き込まれます。
また、無駄な装飾を省いたプリミティブなサウンドが好まれていたこの時期のブラックメタルでは珍しく、シンセのオーケストレーションをダイナミックに取り入れているところも大きな特徴です。
このシンセサウンドが実に効果的で、まるで裸で吹雪の中に取り残されたような悲壮感が演出されます。

リズム面でもブラックメタルによく聴かれるブラストビートは殆ど使用されていません。
スピードメタルのようにドタバタとしてツインバスの高速連打に乗せて爆走するドラミングは、Faust(Dr)のトレードマーク。
初期衝動にまみれた強引とも言える疾走感は、非常に人間らしい心地良さを感じさせます。

そこに乗るIhsahn(Vo/Key)の地獄の底から聴こえるような絶叫は圧巻です。
レコーディング当時は若干18歳だったというのが信じられません。
後にノルウェーを代表する偉大な音楽家へと成長を遂げますが、この頃からその片鱗を見せています。

アレンジもよく聴くと実に凝っており、リズムチェンジを有効に使って組曲のように飽きさせない作りとなっています。
3部構成の作りとなっており、前半はハイテンポでの疾走パート。
中盤では3連のビートの[Bathory]に強い影響を受けたヴァイキングメタルのようなパートが続き、曲の後半では大幅にテンポダウンしてエンディングを迎えます。

特に後半のスローパートで流れるメインテーマのギターリフは圧巻です。
前半部分のアレンジは、このパートのためにある言っても過言ではありません。
どこまでも暗く、どこまでも絶望的な雰囲気が満載で、聞いているこちらが飲み込まれそうです。

初期のシンフォニックブラックメタルを語る上では絶対に避けては通れません。
野心に満ちた若者たちが作り上げた、歴史を超えて愛される名曲です。

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