【曲紹介】Sacrifice / In Defiance

サクリファイス / イン・ディファイアンス (1990)

1983年にカナダで結成されたスラッシュメタルバンド。
1990年に発表された3枚目のアルバム[Soldiers of Misfortune]の3曲目に収録されています。

カナダのスラッシュメタルシーンを[Razor]と共に盛り上げた代表格として知られるバンドです。
デビュー以来数多くのバンド達の前座を務め、大御所では[Motorhead]や[Slayer]等とも共演を果たして知名度を高めていきます。
凄まじい勢いとスピードで疾走しながらも整合感を保ったある意味品行方正なスラッシュサウンドは話題を呼び、前作の[Forward to Termination]はカナディアンスラッシュのマスターピースとして伝説となりました。
デスメタルの登場によって音楽シーンに変化が起き、Sacrificeも同じように音楽性の転換をするのかと騒がれる中で発表された本作は、蓋を開けてみればパワーとスピードに満ち溢れた名盤となりました。
その中から、ハードコア的な明るさも兼ね備えたスピードナンバーがこちらです。

冒頭のハイハットとバスドラムの連打を用いた個性的なドラムソロは、間違いなく[Slayer]からの影響でしょう。
[Angel Of Death]のギターソロ明けのプレイを周到しています。
ですが、そこに重なるギターリフは前作までの[Slayer]風ではなくどことなく[Anthrax]や[Overkill]を思い起こさせるクランチなものです。

ギターリフに細かい刻みをそこまで多用せず、8分刻みの単音リフを織り交ぜるスタイルは後のメタルコアに影響を与えました。
リズム面もドタバタと疾走感を感じさせるもので、どことなくハードコア的な明るさを感じさせます。
80年代前半の邪悪で悪魔的なスタイルとは違った、90年台の新しいスタイルへと進化を遂げようとしている過渡期のサウンドです。

ただ、バンドの顔とも言えるRob Urbinati(Vo.Gt)のパフォーマンスはデビュー当時のまま。
[Kreator]のMille Petrozzaを彷彿とさせるヒステリックなスクリームは、若干迫力不足ながらも良い意味でB級感を演出していてマニアを喜ばせます。
また、バスドラムの高速連打を交えながら若干不安定なリズムで爆走するドラムも魅力的です。
アメリカの整合感のあるスラッシュメタルもいいですが、こういう破茶滅茶な雰囲気はテクニックのあるバンドでは出すことができません。
決して下手ではないけれど大御所バンドには今一歩届かない、ギリギリのところで踏みとどまっているバランス感覚が愛すべき部分です。

カナダのトロントにおけるスラッシュメタルシーンではトップに君臨し、[Voi Vod]や[Annihilator]などの知的なバンド達を尻目に熱心なスラッシュメタルファンからの注目を浴びました。
そんな彼らの最も充実した時期を象徴する名曲です。

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