ハリケーン / ハリケーン (1985)
1983年にロサンゼルスで結成されたヘヴィメタルバンド。
1985年に発表されたデビューEP[Take What You Want]の4曲目に収録されています。
[Quiet Riot]のRudy Sarzoの実弟”Robert(Gt)”とCarlos Cavazoの実弟”Tony(Ba)”がKevin DuBrowの紹介で知り合い、意気投合した2人はバンドを結成。
メンバーのオーディションを開いた結果、セッションシンガーとしてキャリアを持つKelly Hansen(Vo)と[Badfinger]や[Stone Fury]のライブサポートで存在感を示していたJay Schellen(Dr)が加入してライナップが固まりました。
レコード契約を獲得すべく自主制作で発表された6曲入りEpが本作であり、卓越したテクニックとメロディアスな楽曲が話題を呼んでメジャーレーベルのEnigma Recordsとの契約に漕ぎ着けました。
その中から、バンドの代表曲となったタイトルトラックがこちらです。
[Quiet Riot]の弟分バンドとして当時ロサンゼルスを中心にシーンを形成していたグラムメタルとして売り出しますが、肝心のサウンドは他のバンドと一味違います。
ワイルドなバッドボーイズの雰囲気はまるでありません。
メンバーのルックスはいくらか派手ながらも、メロディアスな楽曲と卓越した演奏力を全面に出すスタイルは[Dokken]と似ています。
真っ先に耳に飛び込んでくるのは、Kelly Hansen(Vo)の卓越したパフォーマンス。
非常によく伸びるクリアなハイトーンでピッチも安定しており、ソウルフルに感情をたっぷり込めて歌うタイプのシンガーです。
ヘヴィメタルを歌うにはいささか綺麗過ぎる声ですが、メロディアスな楽曲ならばどんなジャンルも器用に歌いこなせます。
当時のシーンの中では頭ひとつ飛び抜けた逸材だと思います。
楽曲もパワフル且つキャッチー。
ヘヴィメタルの教科書があったら掲載されそうなほどシンプルなギターリフはこの曲のトレードマークですし、一度聞いたら忘れないサビからはステージでの大合唱をするシーンが浮かんできます。
楽曲のラストでメンバー全員が自分が主役だとばかりに白熱したバトルを繰り広げるアレンジも手に汗握る緊張感です。
自主制作でリリースされた作品とは俄かに信じがたいほど充実した内容です。
ただ、残念ながら売り上げには結びつきませんでした。
当時の音楽シーンでは、多少演奏が粗くとも派手でインパクトあるルックスのバッドボーイズロックが求められていました。
メロディックなサウンドのバンドはソフトで品行方正なスタイルに転換を余儀なくされていたので、時代が求めていたルックスとサウンドから運悪く外れてしまったのが原因でしょう。
ですがこの活動が土台となり、それぞれのメンバー達は大きなステップを進むことに成功しました。
Kelly Hansen(Vo)は[Foreigner]のフロントマンとして活躍し、Jay Schellen(Dr)はなんと伝説のプログレッシブロックバンド[Yes]の正式メンバーとして加入を果たします。
才能に溢れたプレイヤー達の遺した、記念碑的な名曲です。
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