ティー・エヌ・ティー / トゥナイト・アイム・フォーリング (1989)
1982年にノルウェーで結成されたハードロックバンド。
1989年に発表された4枚目のアルバム[Intuition]の3曲目に収録されています。
北欧のロックシーン初期から活動しており、メロディアスなサウンドで人気を博したバンドです。
前作の[Tell No Tales]が本国ノルウェーの音楽チャートで1位に輝き、日本でも注目を浴びる存在となりました。
その中でオリジナルドラマーのDiesel Dahlが自身のバンドである[TinDrum]の立ち上げで脱退してしまいますが、後任にKenneth Odiinが加入。
こうして制作されたファンの間で人気の高い本作は、ヨーロッパ全土だけでなくアメリカでも存在が認知されるきっかけとなりました。
その中から、バンドの代表曲とも言えるナンバーがこちらです。
イントロで流れるアルペジオフレーズが強烈です。
アコースティックギターとシンセの音をミックスした透明感のある音色は、爽やかな曲調と相性が抜群。
オーロラの国であるノルウェーを表現するのに相応しいサウンドです。
ギターが奥に引っ込みシンセが主役となりましたが、ハードロックとしてのパワーは損なわれません。
どんな時も全力投球で感情表現豊かに歌うTony Harnellの声が楽曲にエネルギーを吹き込みます。
Aメロで囁きかけるように歌っていたかと思えば、サビではバックコーラスをかき消さんとばかりに声を張り上げ、ギターソロ前では天まで届けとばかりのハイトーンでシャウトをします。
ヒットチャートに上がる北欧のバンドは、パワフルなシンガーの割合が少ないところが弱点でした。
TNTはアメリカ人で声楽を学んだシンガーを招き入れたことで、その弱点を克服。
特に独特なハイトーンで歌われるサビは、美しさを通り越して神々しさすら感じます。
コーラスの重ね方やバッキングの音作りも関係しているとは思いますが、鼻にかかった少年のようなストレートな声がメロディと相まって感情に訴えかけてきます。
ギターソロも楽曲の重要なフックになっています。
雄大なメロディのソロが始まるかと思えば、音の隙間の多いテクニカルなプレイや瞬間的なスピードは世界トップクラスの速弾きを絡めたユニークなプレイです。
Ronni Le Tekrøはスタンダードから外れた個性的なプレイに定評のあるギタリストですが、こういうメロディアスな曲でも違和感なく溶け込ませるセンスは見事!
有りふれたポップソングかと思いきや、お約束からわずかに外れたアプローチで耳を飽きさせない工夫が凝らされています。
北欧のハードポップの中でも、特に健康的で清潔感に溢れた名曲です。
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