【曲紹介】Praying Mantis / Best Years

プレイング・マンティス / ベスト・イヤーズ (1998)

1974年にイングランドで結成されたヘヴィメタルバンド。
1998年に発表された5枚目のアルバム[Forever In Time]の3曲目に収録されています。

[Iron Maiden]や[Def Leppard]と同時期にデビューをし、メロディアスなツインリードとコーラスワークが人気のあるベテランバンドです。
1981年にデビューアルバムを発表するも活動が停滞し、バンド名を[Escape]や[Stratus]等に変えて活動を続けるもバンドは自然消滅。
ですが、1991年に日本で行われたNWOBHM10周年記念でTino(Vo/Gt)とChris(Vo/Ba)のTroy兄弟が企画としてPraying Mantisの曲を演奏したことでバンドの活動再開を決意。
日本のファンたちからの温かい支援のもとでコンスタントにアルバムのリリースを続けます。
シンガーを[Michael Schenker Group]での活動が有名なGary Bardenを迎えて制作された前作[To the Power of Ten]は、彼の卓越したソングライティング力でバラエティ豊かな作風となりました。
リリースに伴う来日公演を終えると、すぐさまシンガーをTony O’horaにチェンジて本作のレコーディングを開始。
完成した作品は強烈な哀愁を帯びたメロディが満載のバンドを代表する名盤となりました。
その中から、バンドの代表曲に挙げられることの多い飛び切りメロディアスなナンバーがこちらです!

ギターのツインリードが奏でる美しいイントロのメロディラインを聴いて、当時このバンドを好んで聴いていた世代のリスナーは何かに気がつくでしょう。
そうです、福岡県出身の7人組バンド[チェッカーズ]が1984年に発表した大ヒットシングル[ジュリアに傷心]と酷似しています。
日本人の耳にとても馴染深いこのメロディは、1998年当時の感覚ですと”一昔前”という絶妙な古臭さが恥ずかしさの混ざったむず痒さを覚えます。
ですがその感覚が心を強く突き動か、て結果的には強烈なインパクトとして記憶に深く刻み込まれました。
また、40年ほど経過した2020年以降の感覚で聴くと、強烈な哀愁を放つメロディラインが古典芸能に触れているような安心感をもたらしてくれます。

この凄まじいメロディラインを歌い上げるのが新メンバーであるTony O’horaです。
ソウルフルでよく伸びるハイトーンの持ち主であり、彼の卓越した歌唱力は楽曲の持つ哀愁を2倍、3倍にも増幅させてくれます。
まさに、この曲のイメージを体現するに相応しい声の持ち主。
Steve Grimmettの後任として[Onslaught]に加入するも、アルバムを発表する前にバンドが解散に追い込まて路頭に迷う不運に巻き込まれたこともありました。
よく諦めずに音楽活動を続けてくれたと拍手を送りたい気分です。

2分近くもある長いギターソロも最高にドラマチック。
テクニカルなプレイは一切しないのですが、甘ったるいメロディが砂糖水の洪水かのように押し寄せてきます。
途中でリズムチェンジをしてスローになる部分などは、演歌や昭和歌謡のような侘び寂びに満ちたモノクロームの情景が見えてきます。
彼らに大きな影響を与えた[Wishbone Ash]ですらここまでメロディに特化したギターソロは出来ないでしょう。

そして、多くのリスナーは曲の最後で炸裂する必殺の転調で頭を抱えることでしょう。
洗練という言葉からは程遠い、あまりにも大袈裟でわざとらしい転調は一歩間違えれば曲を台無しにしてしまう諸刃の剣。
とはいえ、このバンドの熱狂的なファンたちにとってはこれ以上なく喜ばしい展開であることは間違いありません。

全編に亘って押し付けがましいまでに哀愁メロディが炸裂する、メロディアスハードの究極系と言えるでしょう。
歌謡曲や演歌に抵抗のないリスナーならば一生涯愛することのできる歴史的名曲です。

Praying Mantisの他の楽曲紹介はこちら!

アルファベット別の記事一覧はこちら!

コメント

タイトルとURLをコピーしました