アンセム / ジプシー・ウェイズ(ウィン・ルーズ・オア・ドロー)(1988)
1981年に東京で結成されたヘヴィメタルバンド。
1988年に発表された4枚目のアルバム[Gypsy Ways]の1曲目に収録されています。
一時的な解散や多くのメンバーチェンジを経て、息の長い活動を続ける関東のヘヴィメタルシーンを代表するバンドです。
1985年のメジャーデビュー以来着実に実力と人気つけ、念願の海外公演を成功させた矢先にシンガーの坂本英三が衝撃の脱退。
オーディションの結果、森川之雄が加入して新生ANTHEMとしての再出発を図ります。
メンバーを新たに発表された名盤から、屈指の人気を誇るタイトルトラックがこちらです。
初っ端から飛び出すアラビア音階を使用した中東的でオリエンタルな雰囲気漂うギターリフはインパクト絶大で、ここだけで曲の持つ世界観に一気に引き込まれます。
これまでの作品はどれにおいても、金太郎飴のようなヒネリの全く無いヘヴィメタルをプレイしていたバンドに、ここにきて新しい風が吹き込みました。
ドラマチック且つアップテンポで激しい曲調の中でも、まるで夜の砂漠にいるかのような乾いた不思議な雰囲気を醸し出す鍵を握っているのが、2人の新しいメンバーです。
1人目はもちろん、新しいバンドの顔となった森川之雄!
前任の坂本英三は、どこまでも暑苦しく派手なパフォーマンスと荒々しくも爽やかでコミカルな雰囲気で人気を博したシンガーでした。
それに対して森川之雄は、Graham Bonnetを彷彿させる圧倒的パワーを秘めた声で、シリアスな雰囲気を演出するのが非常に上手いシンガーです。
この楽曲の雰囲気にマッチしているのは間違いなく後者。
彼の加入なくして生まれることは絶対になかった楽曲です。
2人目は、サポートメンバーとして参加したキーボードの三国義貴です。
イントロからギターと共に楽曲を彩るシンセのサウンドは、楽曲の持つ怪しい雰囲気を演出するのに充分過ぎるほどの存在感です。
かといって楽曲のメインには決してなり得ることなく、味付け程度のプレイに留まっているところは流石です。
もちろん、ANTHEMらしい持ち味が後退したかと言われればそんなことは微塵も無く、福田洋也のマイケルシェンカーからの強い影響を感じさせるエモーショナルなギタープレイや、リーダーである柴田直人の鉄壁のベースプレイに対する大内貴雅の若さを前面に出したドラムプレイなどは従来通りです。
シンガー脱退のピンチをチャンスに変え、バンドの新境地を作り上げた代表曲と言っても過言では無い名曲です。
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