【曲紹介】Slayer / Hell Awaits

スレイヤー / ヘル・アウェイツ (1985)

1981年にアメリカのカリフォルニアで結成されたスラッシュメタルバンド。
1985年に発表された2枚目のアルバム[Hell Awaits]の1曲目に収録されています。

Big4と呼ばれるアメリカを代表するスラッシュメタルの中でも、特にスピードと過激さにこだわった作風でファンから帝王と親しまれていたバンドです。
1984年に発表されたデビューアルバムの[Show No Meacy]は、メンバーの自腹でレコーディング費用を捻出するなどほぼ自主制作に近い内容でした。
しかし、地道で過酷なリリースツアーが身を結んで世界で4万枚を売り上げる成果を上げます。
勢いに乗ったバンドは同年にEPの[Haunting the Chapel]をリリースし、ベルギーに渡ってHeavy Sounds Festivalのステージで[UFO]の前座を務めます。
その間にKerry King(Gt)が[Megadeth]をサポートするためにバンドを一時的に離れますが、すぐに復帰。
ファン達を集めてのスタジオライブを録音した[Live Undead]をリリースして成長ぶりを見せつけます。
この人気ぶりにレーベルからもレコーディング費用とプロデューサーにRon Fairが当てがわれ、前作とはうってかわって充実した環境で本作が制作されました。
最終的に100万枚以上を売り上げたバンド初期の代表作から、オープニングを飾るタイトルトラックがこちらです。

3つのパートに分かれた組曲形式となっており、6分を超えるドラマチックな大曲となりました。
デビューアルバムからの目覚ましい変化の要因は、メンバー達が夢中になっていたデンマークの[Mercyful Fate]からの影響でしょう。

『Join Us』をひたすら逆再生して地獄から響く呻き声を表現するオープニングが第1楽章。
ドラムの強烈な一撃と共にサタンが地獄から現れる様子を表現したヘヴィでスローなパートが第2楽章。
そして、徐々にテンポアップし、当時としては常識から外れたハイテンポのビートで爆走するパートが第3楽章です。

第2楽章から第3楽章へと移行する際のテンションの高さには凄まじいものがあります。
Dave Lombardo(Dr)による引きずるようなツインバスの連打を中心としたビートに邪悪極まりないギターリフが絡み合い、リフが変化してテンポアップしたかと思えば唐突に始まる第3楽章。
とてつもないスピードでザクザク刻まれるギターリフと、ドタバタと走りまくる2ビートのドラムを聴いた当時のリスナーはどれほどの衝撃を受けたか計り知れません。

演奏している本人達もこれだけのスピードを操るのは相当に大変だったようで、歌詞の言葉が詰め込みきれずにいたりアンサンブルが前のめりに崩れかけるシーンが何度か見受けられます。
前年に発表したEP収録の当時世界最速の曲と言われた[Chemical Warfare]を凌ぐテンポなので、無理もないことです。
当時、まだ誰も到達したことの無かった領域に挑戦するチャレンジ精神がよく伝わってきます。

後にバンドのトレードマークともなる圧倒的パワーとスピードで全てを捩じ伏せるスタイルは、この曲で完成したと言っていいでしょう。
スラッシュメタルにおけるスピード部門の切込隊長とも言える歴史的名曲です。

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