【曲紹介】Slayer / Hell Awaits

スレイヤー / ヘル・アウェイツ (1985)

1981年にアメリカのカリフォルニアで結成されたスラッシュメタルバンド。
1985年に発表された2枚目のアルバム[Hell Awaits]の1曲目に収録されています。

Big4と呼ばれるアメリカのスラッシュメタルを代表するバンドの中でも、特にスピードと過激さにこだわった作風でファンから帝王と親しまれていたバンドです。
メンバー自らがレコーディング費用を捻出してリリースされたデビューアルバムの[Show No Meacy]は、地道で過酷なツアーが身を結んで4万枚以上を売り上げます。
同年にEPの[Haunting the Chapel]もリリースし、ベルギーでのHeavy Sounds Festivalのステージで[UFO]の前座を務めるなど国外でも活動の幅を広げます。
その間にKerry King(Gt)が[Megadeth]をサポートするためにバンドを一時的に離れますが、すぐに復帰。
ファンを集めてのスタジオでの演奏録音した擬似ライブアルバム[Live Undead]をリリースし、こちらも好セールスとなります。
この人気に考えを改めたレーベルからはレコーディング費用とプロデューサーにRon Fairが当てがわれ、前作とはうってかわって充実した環境でニューアルバムのレコーディングを行いました。
最終的に100万枚以上を売り上げたバンド初期の代表作から、オープニングを飾るタイトルトラックがこちらです。

3つのパートに分かれた組曲形式となっており、6分を超えるドラマチックな大曲となりました。
NWOBHMからの影響が強かったデビューアルバムからの目覚ましい変化には、メンバー達が夢中になっていたデンマークの[Mercyful Fate]からの影響が色濃く現れています。

『Join Us』を連続で逆再生して地獄から響く呻き声を表現したオープニングが第1楽章。
ドラムの強烈な一撃と共に悪魔が地獄から現れる様子を表現したスローなパートが第2楽章。
徐々にテンポアップし、当時の常識を遥かに超えたハイテンポで爆走するパートが第3楽章です。

第2楽章から第3楽章へと移行する際の凄まじいテンションの高さは、筆舌に尽くしがたいものがあります。
Dave Lombardo(Dr)のツインバスの連打を中心とした引きずるようなビートに、邪悪極まりないギターリフが絡み合います。
リフの変化と共にテンポアップして緊張が張り詰めていき、最高潮に達した瞬間に唐突に始まる第3楽章。
高速でザクザク刻まれるギターリフと、前のめりのビートで暴走機関車のように突き進むドラムを聴いた当時のリスナーはどれほどの衝撃を受けたでしょうか。

演奏している本人達ですらこれだけのスピードを操るのは困難だったようで、言葉を詰めすぎた歌詞が追いきれなかったりアンサンブルが崩れかける場面もあります。
そのギリギリを保っている綱渡りのような感覚が緊張感を生み、リスナーの気分を更に高揚させるスパイスとなっています。
前年に発表したEP[Haunting the Chapel]収録の[Chemical Warfare]は当時世界最速の楽曲と話題になりましたが、今回はそれを凌ぐスピードです。
1985年当時、前人未到の領域に挑戦するチャレンジ精神と熱意がサウンドからビリビリと伝わって来るのがわかるでしょうか?

圧倒的パワーとスピードで全てを捩じ伏せるスタイルはスラッシュメタルの魅力として愛され続けますが、それはこの曲で完成したと言い切っても差し支えないでしょう。
まさに、歴史を動かす原動力ともなった永遠の名曲です。

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