【曲紹介】Virgin Steele / Love Is Pain

ヴァージン・スティール / ラヴ・イズ・ペイン (1993)

1981年にニューヨークで結成されたヘヴィメタルバンド。
1993年に発表された5枚目のアルバム[Life Among the Ruins]の2曲目に収録されています。

古代ギリシャやローマの神話をテーマにした壮大でドラマチックなヘヴィメタルをコンセプトに挙げているベテランバンドです。
フランスで[Trust]の前身バンドで活動していたJack Starr(Gt)によってアメリカに渡って結成されました。
[Rainbow]から大きな影響を受けた様式美に溢れたサウンドが人気を博しますが、1984年に中心人物のJack Starrはソロ活動に専念するためにバンドを脱退。
バンド名を名乗る権利をDavid DeFeis(Vo)が買い取り、彼が舵を取って活動を続けます。
ですが1988年に発表をした前作の[Age of Consent]はレーベル倒産の憂き目にあって満足なサポートが受けられずにセールスが大失敗してバンドは活動休止に追い込まれます。
しかしDavid DeFeis(Vo)は活動を諦めてはおらず、不在だったベーシストの枠にRob De Martinoを招き入れてバンドを復活させます。
こうしてドイツのShark Records発表された本作は、80年代後期の[Whitesnake]にも似た過去作とはまるっきり音楽性の異なる作風となりました。
その中から、非常に爽やかなラブソングがこちらです。

剣と魔法のファンタジーの世界をテーマにしていたバンドがこれほど爽やかなメロディックロックを演奏しているのを聴くと、多くのファンは椅子から転げ落ちると思います。
澄みわたる青空の下、涼しい風を頬に受けてどこまでも続く海岸線を歩いている光景が目に浮かんでくるサウンドです。

前作までは怪鳥のような金切り声を上げてシャウトをしていたDavid DeFeisが
『我の命が尽きようとも、今この瞬間にも新たな生命が誕生を続けているのだ』
などと壮大なことを歌っていたあのDavid DeFeisが
『恋は残酷、恋は盲目、そして恋は痛みを伴うのさ』
などと失恋をテーマにした内容を歌っているのですから、ファンからすれば気が狂ったかレーベルから脅されたかと様々な憶測が飛び交うでしょう。

ですが、楽曲自体は実にキャッチーでメロディも耳に残ります。
シンセのサウンドは意外にも控えめで、Edward Pursinoのツボをついたテクニカルなギターワークがアンサンブルを彩ります。
David DeFeisもところどころで演出過剰気味にはなりますが、表現力豊かな美声で見事に歌い上げます。
クレジットを見るとバンドのセルフプロデュースの曲も多いのですが、この曲は[DeFeis / Pursino]とありますのでサイドプロジェクトのようなノリで作られたのかもしれません。

エピックメタルバンドがソフトなメロディックロックに挑戦した極めて斬新なケースです。
ですが、持ち前のソングライディング力で見事に自分達の曲に仕上げた名曲です。

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