ナパーム・デス / ユー・サファー (1987)
1981年にイングランドで結成されたグラインドコアバンド。
1987年に発表されたデビューアルバム[Scum]の12曲目に収録されています。
ハードコアパンクの過激な部分を強調したグラインドコアの創始者として知られているバンドです。
結成から数えきれないほどのメンバーチェンジを繰り返しながらデモ音源を数多く発表します。
当初はオ[Discharge]に影響を受けたオーソドックスなハードコアパンクでしたが、[Killing Joke]や[Amebix]、[Possessed]や[Celtic Frost]などジャンルを問わない過激なサウンドを取り入れて独自の音楽性を追求します。
地道な活動が身を結び、設立されたばかりのEarache Recordsからアルバムのリリースが決定。
しかし、スプリットアルバム用に既にレコーディングが終わっていた楽曲をA面に収録することが決まった時点でMick Harris(Dr)を除くメンバー全員が脱退。
急遽新たなメンバーを揃えてB面のレコーディングを完了させます。
A面とB面で演奏メンバーの殆どが異なるという前代未聞の内容となったデビューアルバムは、エクストリームミュージックの歴史を覆す衝撃的な作品となりました。
その中から、極端に短い演奏時間が時代を超えて語り継がれている名曲がこちらです。
短い楽曲は数多くあれど、80年代に1.316秒しかない演奏時間は前代未聞でした。
CDでは一つ前の曲との間隔をあけるために無音部分も含めて4秒ほどありますが、実際に音が鳴っている時間は本当に1秒ぐらいです。
その短さは「世界で一番短い曲」としてギネスブックにも掲載されたほどです。
そのためかメディアにもたびたび取り上げられており、音楽に興味が無い層にもバンド名が知られるきっかけとなりました。
この曲は、たった3つの音符で構成されています。
ギター、ベース、ドラムが音をユニゾンで3回高速で鳴らすだけ。
あまりにも簡素で、そして斬新です。
これだけの短さにも関わらず曲として認識できるのは、全ての音を正確にきちんと鳴らしているからです。
そして、歌詞もしっかりと付いています。
早口で非常に聞き取りづらいのですが、“You Suffer But Why?”と叫んでおり、日本語に訳すと「お前は苦しむ、しかし、何故だ!?」となります。
哲学的で非常に奥の深いテーマです。
曲の短さも相まって、深く心に突き刺さります。
これこそ既存の商業的な音楽に対するアンチテーゼであり、誰も試みなかったチャレンジが身を結んだ結果です。
後にデスメタルやドゥームメタル、ゴアグラインドのシーンで活躍をするメンバーにはこのバンド出身者は少なくありません。
エクストリームミュージックの歴史に多大な貢献をしてきたバンドの歴史的名曲です。
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