【曲紹介】Bruce Dickinson / The Tower

ブルース・ディッキンソン / ザ・タワー (1998)

1989年からソロ活動を開始したイングランド出身のシンガーソングライター。
1998年に発表された5枚目のアルバム[The Chemical Wedding]の3曲目に収録されています。

Iron Maidenでの活動を並行してソロ活動を始め、バンド脱退後も精力的にバラエティ豊かな作品をリリースし続けます。
前作のAccident of Birthはは、プロデューサーにはRoy Zと彼の率いるTribe Of Gipsysをバックバンドに招き、Iron Maiden時代に活動を共にしていたAdrian Smithをギタリストとして迎えて制作され、ファンからの支持を得ました。
それに続く同じメンバーで制作されたコンセプトアルバムが本作です。
ヘヴィでシリアスな音楽性が話題を呼んだ名盤から、Music Videoも作られたキャッチーなナンバーがこちらです。

Iron MaidenのWrathchildを模倣とした16フィールのヘヴィなナンバーに仕上がっており、フレーズからアレンジに至るまで何から何まで瓜二つです。
とはいえ、Adrian Smithは[Wrathchild]をIron Maidenで実際にレコーディングしたメンバーですので、無関係ではありません。

Iron Maidenの演奏と決定的に違うところは、リズムとベースプレイのアプローチです。
とにかく前のめりでアグレッシヴなリズムと、激しいフィンガーピッキングで叩きつけるようなベースサウンドが持ち味のIron Maidenに対し、この曲のバックを固めるTribe Of Gipsysは少しルーズに揺れるリズムとスタッカート気味のベースプレイで重くうねるようなフィールを出しています。
この部分が90年代後半の音楽トレンドと自然な感じで融合しており、1981年の楽曲をリバイバルで蘇らせた好例のような趣です。

Bruce Dickinsonの歌は絶好調であり、高いキーをものともせずにドラマチックに歌い上げており、メロディアスでキャッチーなサビは重苦しい雰囲気の漂うアルバムの中でも良い清涼剤となっています。

それにしても、この曲のIron Maidenっぽさは群を抜いています。
ギターソロ後半部分のギターとベースのユニゾンパートや、その上に乗るツインリードのアルペジオフレーズを聴くと、本家と険悪な関係だったなら即時に告訴されそうなほど似ています。
ただ、ここをオールドスクールな雰囲気ではなく、コンセプトアルバムの中の1曲としてストーリー仕立てで仕上げているために嫌味な部分が全く感じられません。
これは、プロデューサーであるRoy Zの手腕です。

この曲の翌年、Bruce DickinsonとAdrian Smithは古巣であるIron Maidenへの電撃復帰を果たします。
その裏には、この曲のパフォーマンスがあったのかと勘繰ってしまうほどIron Maiden愛に満ち溢れた名曲です。

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